外出が難しい今年の年末年始。おうちで楽しむ映画をパパママ・ジャーナリスト4名の方にご紹介いただきます。第3回は映画・音楽ジャーナリストの宇野維正さん。
『ソウルフル・ワールド』
2020年は9月の『ムーラン』を皮切りに、本来は劇場公開されるはずの作品を自社のストリーミングサービス、ディズニープラスでリリースするようになったディズニー。2020年12月25日に世界同時に配信開始されたピクサーの新作『ソウルフル・ワールド』も、本来は今年の正月映画として劇場公開されるはずだった作品。
自分の父親と同じプロのジャズ・ミュージシャンになることを夢見ている音楽教師が、ある日、命を落としかけて「あの世」に迷い込んでしまう。「まだ自分は何も成し遂げていない」と思う主人公は、なんとか現世に戻って夢を叶えようとするがーー。リアルに描き込まれた「現代のニューヨーク」と新鮮な発想とデザインに満ちた「あの世」、二つの舞台を股にかけて、「人間が生きる目的とは何か?」という哲学的なテーマが軽やかに語られる。いろいろ大変だった2020年、その最後に親子で観るのに相応しい傑作です。
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『オクジャ/okja』
2020年の映画界の明るい話題といえば、非英語作品である『パラサイト 半地下の家族』がアカデミー賞で主要賞を独占するという歴史的快挙を成し遂げて、日本でも韓国映画史上最大のヒットを記録したこと。ちなみに『パラサイト』の日本でのレイティングはPG12で、ウチは小学生の息子を連れて劇場に行きましたが、ちょっとだけ際どいシーンもなくはない作品。でも、同じポン・ジュノ監督作品でも前作の『オクジャ/okja』ならば子どもと安心して一緒に見られます。
「スーパーピッグ」と呼ばれる新種のブタをオクジャと名付けて、友だちのように面倒をみている韓国の田舎に住む少女。そんな少女とオクジャが、バイオテクノロジー系多国籍企業と動物愛護団体の争いに巻き込まれて、ニューヨークの街中で大騒動に。『風の谷のナウシカ』のナウシカ、もっと言うならグレタ・トゥーンベリにも通じる、環境問題を巡る「少女vs世界」の戦いを描いたエンターテインメント大作です。
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『スパイダーマン:スパイダーバース』
男の子ならアイアンマンやブラックパンサー。女の子ならブラック・ウィドウやキャプテン・マーベル。スーパーヒーローの姿を通して、全世界の少年少女たちにロールモデルを示しているマーベル・シネマティック・ユニバース作品。でも、マーベルは実写作品だけでなくアニメ作品も抜群です。
高校生になったばかりの主人公マイルス・モラレスが、教育に熱心で口うるさい警官の父親、グラフィティをはじめカッコいいポップカルチャーを指南してくれる自由人の叔父、そして別のユニバースからやってきたくたびれた中年のピーター・パーカー(=スパイダーマン)との関係を通して、スーパーヒーローとして目覚め、一人の人間として成長する姿を描いた作品。父と子で一緒に観たら、きっと涙なしには観られないはず。
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★映画館で見たい!
「GOGO(ゴゴ) 94歳の小学生」
これまで一度も教育の機会を得られないまま過ごしてきた、ケニアの小さな村で暮らすお婆さんGOGOを追ったドキュメンタリー。90歳を過ぎて初めて小学校に通うようになったGOGOを、同級生の小学生たちが支えていきます。ちょっと優等生向きの作品かもしれませんが、GOGOの姿を通して「学校に通えること」の大事さに改めて気づかされる子もいるはず。GOGOはこう言います。「いい時代さ。正しい方向に物事が進んでるよ」。日本の社会だけを見ていたらそう思えないかもしれませんが、世界全体を見たら本当にその通りだと自分も思います。
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