こどもとメディア

  

榊原先生インタビュー 榊原洋一(さかきはら よういち)お茶ノ水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。専門は、小児科学、小児神経学、発達神経学など。NHK「すくすく子育て」等にも出演中。

Q1 何歳からDVDを見せていいのでしょうか?
Q2 DVDなどを長時間見た場合、どんな影響がありますか?
Q3 映画館で映画を見ることができるのは何歳から?
Q4 映画を見ると子どもの発達にどんなよい影響がありますか?
Q5 字幕付きの映画は何才くらいから楽しめますか?
Q6 3D映画を見せた場合の影響は?
Q7 場面展開の早い映画を子どもが見た場合、子どもの脳への影響はありますか?
Q8 男の子が「銃」が好きで困っています。映画の影響でしょうか?
Q9 暴力的な映画をたくさん見ると悪い影響はありますか?
Q10 子どもが見たがった場合、怖い映画を見せてもいいですか?
Q11 何歳くらいになれば、死を描いた映画を見てもいいでしょう?
Q12 英語のDVDを見せると英語ができるようになりますか?

Q1:何歳からDVDを見せていいのでしょうか?

A:現在のデータからは、はっきり何歳と断言できません。

“見ている”状況によって、子どもへの影響が異なります。
映像を見ること自体の影響なのか、それとも映像の内容に関することなのかを分けて考えなければなりません。まず内容ではなく、見るということに関してですが、家庭で触れることが最も多い映像メディアであるテレビについては、研究が進んでいます。

子どもが映像を見る態度には次の3つがあります。

  1. ①専念視聴(食い入るように見ている)
  2. ②ながら視聴(遊びながらときどき見ている)
  3. ③テレビがついているだけ

日本では、2,3歳児がテレビに触れている時間は2-3時間ぐらいだと言われています。この位の子どもは集中力もまだないため、②または③が多いと思います。テレビの研究では③の調査がほとんどです。
アメリカの小児科学会などは、2歳児以下に映像メディアを見せることを奨励していません。それは2歳児以下に映像メディアを見せても、効果があるという研究結果がでていないからです。

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Q2:DVDなどを長時間見た場合、どんな影響がありますか?

A:視力の低下や落ち着きの無さにつながる、と心配される方が多いのですが、因果関係は証明されていません。

よく、テレビやDVDの視聴で目が悪くなる、落ち着きがなくなる、などの影響を心配する親ごさんがいらっしゃいますが、何事も程度問題です。テレビを見るから落ち着きが無い、というより落ち着きが無い子がテレビをよく見ている、という研究報告もあります。つまりテレビを見る=落ち着きがない子になる、という因果関係は証明されていません。

ただ、統計では1日に4-5時間TVを見ている子ども(幼児)は、言葉の獲得が遅れる傾向があるといわれています。しかしこれも、TVを見ている時間以外に親子でコミュニケーションが取れていれば、影響はほとんどないようです。TVに子守をさせるような状態が日常であれば、それを見直すべきでしょう。長くても1日2時間程度にした方がよいでしょう。

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Q3:映画館で映画を見ることができるのは何歳から?

A 家族のお出かけの機会のひとつ、楽しみのひとつ、と捉えれば、各家庭の判断でよいと思います。

映画館での視聴は、家庭の中で見るテレビやDVDとはまた違う面があります。「おでかけ」するという行為が加わるからです。毎日見るわけではないので、視聴時間に関しては気にしなくてもいいでしょう。

ただ4,5歳の幼児の場合、2時間を超えるような長編はまだ難しいかもしれません。個人差はあるとしても、4,5歳の幼児の集中力は20分程度と言われています。もちろん好きなアニメーションなど作品によっては、もっと長い時間集中できるかもしれないし、実際にどのぐらい集中できるかということは一概には言えません。映画のストーリーや複雑さなど内容によるところも大きいからです。

たとえ飽きてしまっても、ある程度がまんさせるなど、それはそれで家族と一緒のレクリエーションの体験としてはよいのではないかと思います。

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Q4:映画を見ると子どもの発達にどんなよい影響がありますか?

A:知識や体験を増やす、といったメリットはたくさんあります。

ドキュメンタリーや外国の映画を見て、世界や日本の行ったことのない場所の知識を得る、そこから言葉の知識を増やす、など知らなかった世界や自分では行けない場所の知識を”体験”できる。映像の力は大きいですよ。視覚から得る情報量は圧倒的ですから。

また、映画を見ながらワクワクしたりスカッとしたり、泣いたりホッとしたり、エンターテイメントとして楽しみながら、感情の体験を増やすことにもなります。
中学生以降になれば、誰かと一緒に見て感情を共有する楽しみや、デートコースとして楽しむこともあるでしょう。
知識、行動、感情それぞれについて、映画が子どもの成長に与えるメリットは、たくさんあると思います。

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Q5:字幕付きの映画は何才くらいから楽しめますか?

A:中学生以上なら十分楽しめるのではないでしょうか。ただ個人差があるのでそれ以下の年齢が楽しめない、ということはないと思います。

最近では吹き替えの映画も多いですよね。字幕の映画を子どもと楽しみたい、という親ごさんもいらっしゃるでしょう。字幕は文字、それも漢字を”読む”ことができることが大前提です。常用漢字がほぼ読める中学生ぐらいでしょうか。それに加えて字幕のスピードについていけるかどうかが大切です。
ただ漢字理解力や、情報処理能力にも個人差がありますので、中学生以下では楽しめない、ということではないと思います。

注:編集部調べ)
常用漢字……小学校卒業までに学ぶのは1006字/中学で939字。計1945字
大人が字幕を読むスピード……1秒に4,5文字/縦字幕の場合→1行10文字(2行まで) 横字幕の場合→13文字

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Q6:3D映画を見せた場合の影響は?

A:【3D】は、まだ新しい分野なので正確な影響は判っていません。

お母さんたちが心配するとすれば以下のふたつでしょう。
①目が疲れるのではないか。
②迫力がありすぎて子供に刺激が強いのではないか。

3Dメガネを使って平面の物を立体的に近くで見せる、といういわゆる”脳をだます”行為なので、確かに目の疲労があるかもしれない、という心配はあります。ただ眼科医界でもはっきりしたデータはでていません。

②についてですが、すごく怖いホラーを子どもが3Dで観たら、それはもちろん怖いと思います。PTSD(心的外傷ストレス障害)にならないとは断言できません。
一方で、大好きなアニメのキャラクターが、優しくそっと、近くで手を差し伸べてくれるような映像だったら子どもたちはきっと喜びますよね。だからこういった【3Dの心理的影響】については映画の内容によって大きく左右されると考えられます。ただきちんとした研究やデータがまだ少ないので、科学的にこうです、ということはまだ言えないというのが現状です。

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Q7:場面展開の早い映画を子どもが見た場合、子どもの脳への影響はありますか?

A:一時的に疲れてしまうかもしれませんが、長期的な影響は判っていません。

【早い場面展開のある映像】が、脳の中でも重要な機能をつかさどると言われる前頭葉にどういう影響を及ぼすかを調査したアメリカの研究があります。

1)お絵かきをしている子供
2)11秒に一度場面展開のある映像を見ているこども
3)30秒に一度場面展開がある映像を見ている子ども

それぞれ9分経った直後に、簡単な前頭機能テストをするんです。そうすると、2)の早い場面展開のある映像を見た子供は前頭葉を使う機能が落ちている。1)のお絵かきをしていたグループと 3)の30秒で映像が変わる映像を見たグループの子供は前頭葉の機能はあまり落ちていない。ただ、これは映像を見た直後なので疲れによるものだと考えられています。長期的に弊害が出るかどうかはわかりません。内容にもよりますし、毎日朝から晩まで早い場面展開の映像を見るわけではないと思いますので。

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Q8:男の子が「銃」が好きで困っています。映画の影響でしょうか?

A:影響はあるかもしれませんが、男の子が銃に興味があるのは普通です。

映画の影響がまったく無いとはいえないでしょうが、男の子なら銃やナイフが好きな子どもは普通にいると思います。コレクターも男性のほうが多い。性差や好みという面もあるでしょう。

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Q9:暴力的な映画をたくさん見ると悪い影響はありますか?

A:暴力的な映画を見たから、必ず暴力的になるということは一概には言えません。

暴力的なシーンを見た直後は、子どもならマネしてみたくなることはあるかもしれませんが、それがずっと続くということはないでしょう。
気になるのであれば子どもに見せる前に親が内容をチェックする、また一緒に見ているDVDに暴力的なシーンがあったら、それについて否定的なコメントを言ってみるなどしては、どうでしょう。

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Q10:子どもが見たがった場合、怖い映画を見せてもいいですか?

A:怖い映画を見れば、ストレスを感じることはあります。

大人は自分で選んで怖い映画を見るわけですから、怖い思いをしてもいいのです。ただ、子どもに見せる場合は若干注意が必要です。怖いシーンなどをあまり繰り返し見せると、ストレスを感じて睡眠障害になる場合もあるからです。怖いものを見ると、脳の中の扁桃体が反応します。この扁桃体の反応が、ストレス耐性に影響を与えるといわれています。
しかし、まったくストレスの無い生活が人間にとっていいかといえばそうでもないように、怖い映画も頻度や程度によるのではないでしょうか。
映画を見ることが子どもの経験を増やすことの一つだと思えば、怖い映画が一概にだめとは言えません。気になるなら先に親が見て、見せていいかどうか判断したほうがいいでしょう。

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Q11:何歳くらいになれば、死を描いた映画を見てもいいでしょう?

A:小学生高学年くらいになれば、ある程度理解できるでしょう。

子どもは、たとえば5歳なら5年しか生きていません。小さい子には、「明日」は理解できても、1年後は遠い未来のかなた。5歳で人生を振り返るのは無理なように、「死」を怖い、恐ろしいと思えるようになるには「未来」に関して意識があるかどうか、また「死」を想像できるかどうかです。小学校高学年になれば、かなり長いスパンで物事を考えられるようになります。
「死を理解させたい」という理由で映画を見せるのであれば、「死」が、永久なお別れなのか、目の前からただその人がいなくなってしまうことなのか、区別できるようであれば、映画を見ても死の意味を考えられるでしょう。

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Q12:英語のDVDを見せると英語ができるようになりますか?

A:英語を覚えたい、という意識を子どもが持っていないと難しいでしょう。

無意識の子どもに英語の映画を見せても、バイリンガルにするのは難しいでしょう。
このテーマの研究実験があります。子どもに英語を話している人の映像(DVD)を見せたときと、同じ内容で目の前で話してもらう実験をした結果、子どもは生身の人間の話す言葉のほうに反応しました。
英語はコミュニケーションの手段なので、画面の向こうの人と接触する必要がなければ英語自体は頭に入ってこないようです。英語を覚えよう、という意識が子どもにあって、映画の中の英語に耳を傾けるのであれば、この限りではありませんが・・・。
字幕を消して、英語の音を聞き取ろうとする大人にとっては、それなりに有効な学習法かもしれません。

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遠藤利彦先生に未就学のお子さんの映像鑑賞について伺いました。東京大学大学院教育学研究科教授・同附属発達保育実践政策学センター(Cedep)センター長。
        1962年 山形県生まれ。東京大学教育学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(心理学)。

Q1. どのような作品をこどもに見せるのがよいでしょうか?
Q2. 見せるとよくない作品はありますか?
Q3. 年齢の高いきょうだいと同じコンテンツを見せるのが心配です。
Q4. こどもに一人で動画をみせてもよいですか?
Q5. こどもが同じ動画に夢中になり、何回も繰り返して見ているのを途中で止めさせてもよいのでしょうか?
Q6. 何歳の頃からこどもにルールを作ればよいのでしょうか?
Q7. ルールが守れないこどもにはどう接すればよいのですか?
Q8. 作品の選択をこどもに任せてもよいでしょうか?
Q9. アニメーションと実写でこどもへの影響に差はありますか?
Q10. アニメーションやファンタジー作品の豊かな色彩や物語はこどもの芸術性を育みますか?
Q11. 主人公が外国人と日本人では、日本人のこどもにどういう影響の差があるのでしょう?
Q12. こどもが映画を見るにはスマホとタブレットのどちらがよいでしょうか?
Q13. スマホやタブレットを見てもよい時間の長さはどれくらいですか?
Q14. 映像を見せるといけない時間帯はありますか?
Q15. 動画視聴が習慣になると読書への関心が薄れますか?
Q16. 会話のほとんどない作品を繰り返し見ることは、言葉を学ぶ時期のこどもにマイナスとして働きますか?
Q17. 外国語の作品を見ることで外国語を覚えますか?

Q1:どのような作品をこどもに見せるのがよいでしょうか?

A:現実への繋がりや好奇心を促すような作品がよいでしょう。

作品を通して聞たり見たりすることが、世の中の”実態に繋がる”内容がよいと思います。アニメーションや実写を見て、「この動物は実際に見たらどんなふうに動くんだろう」「鳴き声をじかに聞いてみたい」などと、こどもの好奇心を喚起させるようなコンテンツがよいでしょう。
映像を観た後に、「じゃあ、外へ見に行こうか? 実際に聞いてみようか?」と実体験につながることは大切。現実への繋がりや好奇心を促すような映像をバランスよく見ることが大事だと思います。

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Q2:見せるとよくない作品はありますか?

A:極度に強い光、過度に早い映像、複雑すぎる作品は避けたほうがよいでしょう。

こどもがついていけないような複雑な内容は情報処理の負担が脳にかかりすぎます。とはいえ、単純すぎるものでもなく、中程度の複雑さがよいと思います。無色よりは色のあるもの、静止画よりは動画といった、ある程度刺激のある作品がよいとされています。

また、極度に強い光や過度に速い映像も目や脳に悪影響があるかもしれません。一時的にこどもが強烈な刺激に魅せられて夢中になってしまうこともありますが、特に就学前のこどもには、理解できるストーリーを強烈すぎない光やスピードで見せる映像がよいと思います。

映像には、こどもの好奇心や興味を引き起こす”覚醒系”作品と、こどもの気持ちをほっこりと癒やす”鎮静系”作品があります。そういった作品をそのときどきの状況や目的に応じて臨機応変に使い分けて見せることが大切でしょう。

さらに、気をつけていただきたいことはこども一人ひとりの個性に合わせたコンテンツを選んでほしいこと。映像や音などに対する敏感性は個人差があります。こどもによっては強い刺激を求めたり、少しの刺激でも負担に感じたり、様々。生まれつきの個性や気質があるので、どの映像がよくて悪いという一般的な基準を設けるのは難しいですが、親御さん自身がこどもに合わせて調整していくことが大切です。

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Q3:年齢の高いきょうだいと同じコンテンツを見せるのが心配です。

A:お子さんが暴力的な行動を頻繁に模倣するようであれば、作品から引き離すことも時には必要かもしれません。

作品を見ているお子さんが不安そうな様子を見せたら、そのコンテンツは見せないほうがよいと思います。暴力的な映像に過度にさらされている場合にこどもの攻撃性が若干増すという研究結果も一部ありますが、映像とこどもの暴力性や落ち着きの因果関係は現時点で明確に証明されていません。

こどもは見るだけでもいろいろなことを学習し、自分が憧れている登場人物と同じ行動をとることで学習していきます。これは”観察学習”や”モデリング”と呼ばれるもの。もし、暴力的な行動を頻繁に模倣するようであれば、ときにはそういった映像を避けてもよいかもしれません。

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Q4:こどもに一人で動画をみせてもよいですか?

A:1回目は親子で見て、それをお子さんが気に入ったら、それからひとりで見せても構いません。

最初は親御さんと一緒に見るのがよいでしょう。こどもの発達は”人との相互作用”が絶対的な基盤になります。絵本の読み聞かせのように、一緒に作品を見て気持ちを共有し、言葉を交わしていく。このような経験は幼少期のこどもの発達にはとても重要です。動画も映像も同じで最初の映像は親子で一緒に見て気持ちを共有し、会話をする。そしてこどもが気に入れば、ひとりで見せてもよいのではないでしょうか。
作品を選ぶ基準は「この作品だったらうちのこどもにぴったりだな」と絵本を選ぶときと同じように考えればよいでしょう。

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Q5:こどもが同じ動画に夢中になり、何回も繰り返して見ているのを途中で止めさせてもよいのでしょうか?

A:バランスのよい生活習慣を作るために、ルールを作ってもよいのでは?

同じ動画を何度も繰り返して見ているということは、お子さんはすでに内容を理解して、いつでも見るのを止めてもよい状態になっていることだと思います。食事の時間はなるべく見ないことにするなど、バランスのとれた生活習慣が送れるようにルールを決めてもよいのではないでしょうか。

ルールが守れるようになるのは個人差がありますが、3~5歳のこどもは社会には規則があるということに対して敏感になっていきます。ただ、それ以前に家庭内でも世の中の約束や決まりごとに対して、こどもが気づくことはとても重要だと思います。ルールをすんなりと受け入れ聞いてくれなくとも、早い段階からお子さんに対して「こんなルールもあるんだよ」と話しておくことで、お子さんがもう少し成長したときに社会のルールに対応していきやすくなるかもしれません。

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Q6:何歳の頃からこどもにルールを作ればよいのでしょうか?

A:言葉をなんとなく理解し始めた頃から、ルールについて話しておくとよいでしょう。

1歳頃までに、こどもはほかの人の行動をじっくり観察するようになっています。例えば、上のきょうだい、お父さんやお母さんの行動を見ています。お子さんが”なんとなく言葉を理解”していると思うような時期から、「ルールがある」ことを話しておけばよいと思います。家族の行動を観察しながら、親に言われたことを少しずつこどものなかで消化していくので、周りの人の行動も大切です。

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Q7:ルールが守れないこどもにはどう接すればよいのですか?

A:「今度守ろうね」と親の思いを伝えることが重要です。

「今度守ろうね」という言い方がよいと思います。「今回はできなかったけど、次はルールを守れるとよいよね」と親の思いを伝えていくことは重要でしょう。映像を見るのを止めさせるときは「いまここで止めたら、あなたはもっとよく眠れるよ」とか「いまはご飯を楽しく食べようね」という呼びかけでよいと思います。

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Q8:作品の選択をこどもに任せてもよいでしょうか?

A:ジャンルには一定のバリエーションを保ちましょう。

こどもの選択に任せっぱなしというよりは、一定のバリエーションをこどもに経験させてみることも必要です。こどもがすごく気に入ったものがあっても、ひょっとしたらまったく違うジャンルの作品も好きになるかもしれません。お子さんの好み、興味関心や好奇心を広げて現実世界での活動を多様なものにするため、ある程度のバリエーションを親御さんが保ってあげるのがよいと思います。

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Q9:アニメーションと実写でこどもへの影響に差はありますか?

A:アニメーションの刺激のほうが実写より弱い場合もあります。

こども向けの作品はアニメーションが多いですよね。アニメーションは実写よりも全体的に刺激が和らいでいるという意味では、お子さんにとって好ましい側面もあります。リアルな実写では刺激が強すぎるような場面も、アニメーションで表現されると少しぼかしが入ります。また、アニメーションのキャラクターは子供のことが多いので、外見や声など視覚的にも聴覚的にも柔らかな印象になっています。

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Q10:子どもが見たがった場合、怖い映画を見せてもいいですか?

A:怖い映画を見れば、ストレスを感じることはあります。

大人は自分で選んで怖い映画を見るわけですから、怖い思いをしてもいいのです。ただ、子どもに見せる場合は若干注意が必要です。怖いシーンなどをあまり繰り返し見せると、ストレスを感じて睡眠障害になる場合もあるからです。怖いものを見ると、脳の中の扁桃体が反応します。この扁桃体の反応が、ストレス耐性に影響を与えるといわれています。
しかし、まったくストレスの無い生活が人間にとっていいかといえばそうでもないように、怖い映画も頻度や程度によるのではないでしょうか。
映画を見ることが子どもの経験を増やすことの一つだと思えば、怖い映画が一概にだめとは言えません。気になるなら先に親が見て、見せていいかどうか判断したほうがいいでしょう。

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Q11:主人公が外国人と日本人では、日本人のこどもにどういう影響の差があるのでしょう?

A:バリエーションをもたせた国内外の作品を見ることは、こどもの多様性に対する考えを育みます。

影響の差に違いがあるというよりは、大人もこどもも、違う文化のなかでは人間関係や行動のあり方も違う、そして、社会には暗黙の基準があることを、外国作品を通して学びます。例えば、個人の成功や達成を注視する欧米の文化では、そういったテーマの物語が作られます。一方、日本などアジア圏の作品ではどちらかというと人との関係性を重視したテーマ—自分が成功するよりは、みんなで一緒に幸せになろう—がアジアのコンテンツには多い気がします。

そういった色々な文化の作品を見ていくうちに、「ああ、そういう考え方もあるな」とこどもが受け止めていくのはよいことではないでしょうか。そもそも、こどものほうが「違い」に対する拒絶反応が大人よりも低いと思います。違いは認識しても、違いを大切にする力はこどものほうが豊か。これからの社会を考えるときに、国内外を含め、多様な作品選びはこどもにとって好ましいでしょう。

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Q12:こどもが映画を見るにはスマホとタブレットのどちらがよいでしょうか?

A:強い光が視力や睡眠に悪影響を及すので、どちらも長時間見続けてはいけません。

目のお医者さんによると、以下の3つが視力に悪影響を及ぼす場合があると言われています。

  1. ① 強い光を浴びる
  2. ② 小さなスクリーンで映像を見る
  3. ③ 長時間、見続ける

ブルーライトなど強い光を浴びると睡眠に関わるホルモンが分泌されづらくなります。とりわけ、寝る前のスマホやタブレット使用に警鐘を鳴らす専門家は多いです。実際に、WHO(世界保健機関)は5歳未満の幼少期ではできるだけブルーライトにふれさせないほうがよいと提案しています。

ただ、現実的に親御さんがスマホやタブレットを日常的に使用している状況で、こどもたちの興味がそこに行かないわけはありません。ですからある程度のルールを決めたほうがよいでしょう。

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Q13:スマホやタブレットを見てもよい時間の長さはどれくらいですか?

A:こどもに悪影響を与えるスクリーンタイムは断言できませんが、こどもの活動にバリエーションをもたせましょう。

WHOのガイドラインは、1歳未満のスクリーンタイムはゼロ、1歳~4歳のスクリーンタイムは継続する1時間未満だと示しています。しかし、これは必ずしもその時間を越えるとこどもに悪影響があるという意味ではありません。スマホやタブレットで遊ぶことにより、こどもたちが体を動かして遊ぶことが少なくなり、運動面の発達に影響してしまう危惧があるという意味です。

1日中スマホやタブレットを見て過ごすのは明らかによくないですが、こどもの活動にバリレーションをもたせてあげればよいと思います。ある時間帯はスマホやタブレットを見てもよいが、外遊びや会話する時間を十分にとり、バランスのとれた活動をすれば大丈夫でしょう。

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Q14:映像を見せるといけない時間帯はありますか?

A:就寝1時間前からは映像を見せないほうがよいでしょう。

ブルーライトの弊害は大人もこどもも同じで、睡眠と関わるメラトニンというホルモン分泌に影響します。夜に映像からの強烈な光を浴びると、脳が昼間だと勘違いをして眠れなくなるのです。こどもには連続的な10時間の睡眠が必要なので、メラトニンの分泌を抑制しないように就寝前に映像を見せないほうがよいでしょう。特に1~3歳のこどもは昼寝の時間も大切なので、昼寝も夜も就寝前の1時間ぐらい前から映像は見せないほうがよいかと思います。

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Q15:動画視聴が習慣になると読書への関心が薄れますか?

A:文字への橋渡しとして動画を見せるのはいかがでしょうか。

文字にふれることも、こどものイマジネーションを広げるために重要です。動画は動きも音も情報が全部そこに盛り込まれているので、本と違い、こどもが想像力でストーリーを補う必要がありません。本だと、文字の背景にある世界をこどもが頭のなかで作り上げなければいけないですよね。そういった意味で、こどもが絵本や本にふれることは一定量必要だと思います。

なにか動画を見たら、それに関連する物語を絵本や本で読むなど、動画と文字を補い合うような状況を作り出すのはいかがでしょうか。多くのお子さんは、動画を見て面白いなと思ったら、そのキャラクターが登場する絵本や本を読みたがります。”文字への橋渡し”として動画を見せる工夫をすればよいと思います。

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Q16:会話のほとんどない作品を繰り返し見ることは、言葉を学ぶ時期のこどもにマイナスとして働きますか?

A:それ自体がデメリットになることはありません。

基本的に言葉は、自分自身が色々な人から話しかけられて発達します。作品で見るシチュエーションをこどもが自分のなかで消化し、それを言葉にし、会話をすることでマイナスには働きません。ですから、周りの人がその作品について会話をお子さんとすれば大丈夫でしょう。

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Q17:外国語の作品を見ることで外国語を覚えますか?

A:作品から覚えた単語を使い、実際に会話することが語学習得としては必須でしょう。

外国語をただずっと聞いていても習得はできません。自分自身がその外国語で話しかけられたり、一緒に話したりすることで言語は効果的に習得されていきます。作品から覚えた単語を使い、”実際に会話する”機会を作ることが重要。

語学の習得を動画だけに期待しない方がよいと思いますが、日本語以外の言葉に対するこどもの興味関心や好奇心を引き出してあげるのはよいことだと思います。そこにはやはり、親御さんとの会話が必要です。親御さんと外国語について話すことで、語学を学んでいける可能性はあります。

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