カンヌ映画祭と子どもたち

カンヌ映画祭と子どもたち
岡崎匡(Tadashi Okazaki)

みなさんは南フランスで開催される、カンヌ国際映画祭をご存知ですか? 世界中から様々な映画が集まり、レッドカーペットの上を華やかなスターたちが歩く、映画ファンからの注目がもっとも高い映画祭のひとつです。66回を迎えた今年は、是枝裕和さんが監督し、福山雅治さんが主演した『そして父になる』(10月6日公開)が見事に審査員賞を受賞し、日本でも報道を目にされた方がたくさんいらっしゃることでしょう。今回は、このカンヌ映画祭に見られる子どもたちの姿をご紹介します。

カンヌ映画祭には過去の名作を最新の技術で甦らせてお披露目をする、カンヌクラシックス部門があります。今年は小津安二郎監督の生誕110年を記念して『秋刀魚の味』(62)が上映されました。また、同部門にはもう1本、子どもたちが主役のイギリス映画がありました。そのタイトルもずばり「子どもと映画の物語」(A Story of Children and Film)。

A Story of Children and Film

25カ国53本の名作の中から、子どもの登場場面を抜き出して紹介した、力作ドキュメンタリーでした。『大人は判ってくれない』『E.T.』『ケス』『キッド』『ミツバチのささやき』……映画ファンなら誰もが頬をゆるめてしまうような、名場面の子どもたちの存在感!日本映画からは『東京の宿』(小津安二郎監督)、『風の中の子供』(清水宏監督)、『お引越し』(相米慎二監督)、そして是枝裕和監督の『誰も知らない』と『奇跡』が登場していました。「子どもと映画の物語」そのものは、子どもが楽しむようなタイプの映画ではありませんが、子どもと一緒に観たい映画を探している大人にとっては、とても便利なカタログとなるような丁寧な作りのドキュメンタリーでした。

Ilo Ilo

その他にも、フランス監督協会が主催する監督週間という部門があります。今年、この部門で上映されたシンガポール映画「イロ・イロ」(Ilo Ilo)は、共働きの家庭で育つワンパク少年ジャルと、フィリピンからやってきたメイドのテレサとの間に深い心の絆が生まれていく過程を、甘さと苦さのバランスよく描いた佳作でした。ジャルの視点からながめた世界が、是枝監督や侯孝賢監督の初期作品を思い起こさせる親密さにあふれ、カンヌ映画祭のカメラドール(新人賞)を受賞しました。日本での紹介も心待ちにされます。

また、この監督週間部門では若い観客の育成のため、地元の高校や公共団体と協力して団体鑑賞や監督との特別な質疑応答の時間を設けるなどの試みを行なっています。2007年に児童映画の名作『赤い風船』(56)がデジタルリマスターにより鮮やかに甦った際には、たくさんのちいさな観客たちが会場をにぎやかにしていました。上映後には南仏の強い陽射しの中を誇らしげに胸を張りながら、赤い風船を片手にクロワゼット大通りを闊歩していた光景が、今でもありありとまぶたに浮かびます。
この子どもたちの中に、もしかすると未来の巨匠がいるかも知れませんね。

岡崎匡(Tadashi Okazaki)
ちいさなひとのえいががっこう代表
「ちいさなひとのえいががっこう」とは、「映画を勉強しよう!」をコンセプトに、子どもも親も一緒になって映画を楽しめる場を作りたい、とボランティアの有志が集まって活動を始めたサークルです。
http://yaplog.jp/eigagakkou/

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