
焼きリンゴのパイ 魔法仕立て ―『魔法にかけられて』より―
伊藤麻衣子 Maiko Ito
男兄弟の真ん中に生まれたもので、子どもの頃からかなり男勝り。お人形や女の子らしいものに、あまり興味を持ったことがありません。そのまま大人になった私に、小学生の姪が聞いたのです。「麻衣子ちゃんのお気に入りのプリンセスは誰なの?」と。はてな顔の私に「だから~、シンデレラか、白雪姫か、アリエルか、ベルか・・・」と続けるわけです。強いて言えば、もののけ姫か、ナウシカだなと心の中でつぶやきました。そうか、普通の女の子ってプリンセスに憧れるものなのかと、姪に気づかされた出来事でした。
3月3日のひな祭りを前に、今月は『魔法にかけられて』を取り上げます。アニメのおとぎ話の世界の住人、ジゼルは運命の王子様についに出会います。ウェンディングドレスを身にまとい、お城に向かった彼女。しかし、魔女の陰謀で泉に突き落とされ、現代のニューヨーク、実写の世界に迷い込んでしまうのです。
魔女と言えば、昔も今もやっぱり毒りんご。追手が幾度となく、毒りんごをさしだしてくるのですが、さてジゼルの運命はいかに・・・。
今月は子どもの頃、よく作った焼きリンゴを生かしたパイに挑戦します。アップルパイより手軽で、特別にちょっぴり魔法仕立てにしてみます。
■焼きリンゴのパイ 魔法仕立て
【材料】
りんご(紅玉) 1個 ※人数にあわせて個数を増やしてください。
バター 大1
砂糖 小1 ※りんごの中用
干しぶどう 15~20粒くらい
シナモンパウダー 適量
冷凍パイ生地シート 1枚
卵黄 1個
生クリーム 100ml
砂糖 大2 ※生クリーム用

りんごの種類は色々ありますが、小ぶりで赤く、熱を入れるとより美味しくなる紅玉を選びました。

冷凍パイシートを常温で解凍しておきます。リンゴの皮をよく洗い、ナイフで芯をくりぬきます。底を抜かないように注意しましょう。


穴の中に干しぶどう、砂糖、シナモンパウダー、バターの順に詰めていきます。中で混ざるので、バターを上にすると全体に味がしみわたります。

230度で予熱したオーブンに、入れてリンゴを焼きます。20分くらい。


パイシートを魔女の鏡の枠に見立てて、ひし形に組み合わせます。好きな形にしてみてください。フォークで筋を付けていきます。境目をくっつけるように。卵黄をほぐしてパイシートに塗ります。

リンゴが焼きあがったら、パイシートを焼きます。アルミホイルをしいて焼き目が少しつく10分くらい。
焼いているうちに、生クリームに砂糖を加えて泡立てます。角が立つくらいまで。


リンゴとパイが焼きあがったら、お皿に盛り付けを。パイの上にリンゴを置き、あとは生クリームでデコレーション。お子さんと一緒に楽しんでみてください。

完成です。今回は鏡の枠っぽく見えるお皿を選びましたが、ジゼルのドレスに合わせて花柄でもかわいいかも。リンゴを二つに割ると、生クリームの感じが、なんだか魔法にかけられたようではないですか。
現代に迷い込んだプリンセス、ジゼルは「夢は叶うものなのよ」と笑顔で語り、まわりを困惑させます。そんな彼女のラストの活躍は見事。現代のプリンセスは自力で運命を切り拓いて、愛する人を手にしておりました。
そして大人になった少女は思いました。「毒りんごを齧らないと、運命の人には出逢えないのか~」と。焼きリンゴじゃダメですかね?仕事、恋愛…いろんなことで悩んだ時に、お伽話は勇気をくれる。大人になって初めて知ったプリンセス映画の魅力でした。

伊藤麻衣子(Maiko Ito)
福島県白河生まれ。4人兄弟、男兄弟にかこまれて育つ。
今は映画などの宣伝と、沖縄の器の営業を生業に。料理上手の母を見て育ったので、気づけば料理が趣味に。今回はこのコラムで映画、器、料理と自分の好きなものをどう形にできるかが楽しみです。
美味日和~谷根千暮らし~
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