「シルク・ドゥ・ソレイユ 3D 彼方からの物語」

映画と本をご紹介するコラム、第8回です。

「シルク・ドゥ・ソレイユ 3D 彼方からの物語」
矢本理子(Rico Yamoto)

サーカスと聞いて、何を思い浮かべますか? 派手なメイクの道化師でしょうか? 綱渡りの芸当でしょうか? 日常から離れて、しばし別世界を楽しむことができる魔法のような空間。それが、サーカスの魅力です。さあ今月は、サーカスを楽しむ3つの方法(映画、絵本、美術展)を、ご紹介しましょう。

最初は、現代のサーカス、“シルク・ドゥ・ソレイユ”です。1984年に、元大道芸人だったギー・ラリベルテによって、カナダで設立されたエンターテイメント集団“シルク・ドゥ・ソレイユ”には、50カ国から集まった才能あふれるパフォーマーが約1200人も所属しています。
常設劇場があるラスベガスを中心に、6つの大陸の300都市で毎日ショーが行なわれており、日本にもこれまでに、「サルティンバンコ」や「アレグリア」といった舞台公演が来日しました。

今年、映画「シルク・ドゥ・ソレイユ 3D 彼方からの物語」が完成しました。日本では今月の9日から、公開が始まっています。サーカスのテントで空中ブランコの芸当を見ていた女性ミアが、突如、不思議な世界に迷い込んでしまうお話で、消えてしまったブランコ乗りの青年を探しているうちに、ミアが次々と遭遇するのが、実際の“シルク・ドゥ・ソレイユ”の舞台なのです。本作の製作総指揮は、「タイタニック」や「アバター」で有名なジェイムズ・キャメロンが、そして監督は、「シュレック」や「ナルニア国物語」を手がけたアンドリュー・アダムソンが務めています。人間の身体能力の限界に挑戦した、驚異的な技の数々。色とりどりの衣装や大がかりなセット。彼らのアクロバティックな技の連続には、本当に圧倒されます。

「ふしぎな さーかす」(安野光雅 絵・著、福音館書店、1981年)

私は、サーカスと聞くと、いつも安野光雅さんの「ふしぎな さーかす」を思い出します。真夜中、みんなが寝静まったあと、小人たちがサーカスの芸当を繰り広げるお話で、紙のライオンが生き物に変身したり、カップからこぼれたコーヒーが池になったりと、虚構と現実が入り混じった不思議な絵がたくさん載っている、素敵な絵本です。

佐野洋子さんの「おばけサーカス」(講談社、2011年)も大好きな本です。ある日、おばけの一家がひろばに来て、サーカスのテントを張ります。みんなおばけですから、それぞれの特技を生かして、猫や熊やブランコ乗りなどに化けては芸当を披露する、楽しいお話です。末っ子のペロペロの活躍が楽しいのです。もとは1980年に銀河社から刊行された絵本ですが、昨年、およそ30年ぶりに講談社より新装復刊版が出版されました。

今日は最後に、サーカスを数多く描いたフランスの画家ジョルジュ・ルオー(1871~1958)の展覧会をご紹介します。ルオーが残した膨大な作品のうち3分の1がサーカスの道化師や踊り子、曲馬師を描いたものだったそうです。

パナソニック汐留ミュージアムで開催されている「ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス」では、絵画のみならず、サーカスそのものにもスポットが当てられています。パリに現存する唯一のサーカス劇場「シルク・ディヴェール」の紹介ビデオや、ヌーヴェルヴァーグの映画監督ジャン=ピエール・メルヴィルが撮った短編「ある道化師の24時間」(1946)の上映。また、ルオーが実際に見たサーカスのパンフレットや、当時、人気を博した道化師たちの写真なども展示されており、当時のパリのサーカス文化について、総合的に学ぶことができます。

今週の週末、映画、絵本、展覧会を通して楽しいサーカスの世界に触れてみてはいかがでしょうか?

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映画公式HP

矢本理子(Rico Yamoto)
東京うまれ、茨城県そだち。大学では社会学と歴史学を、大学院では西洋美術史を学ぶ。
1995年に岩波ホールへ入社。
現在は宣伝を担当。

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