映画プロデューサーのしごと

映画にかかわる仕事をされている方々をご紹介するコラムの第3回目。

「映画プロデューサー」という言葉をよく耳にしますが、「プロデューサー」っていったい何をする人なのでしょう? 今回そんな疑問に答えてくださるのは、80年代から30年以上にわたって日本映画の製作に関わり、「家族ゲーム」「転校生」「ナビィの恋」や「カナリア」など数々の名作を世に送り出してきたベテラン・プロデューサーの佐々木史朗さん。「僕にはミーハー心があって、おもしろいと思ったものに、すぐ飛びついちゃうんだよね。回りは大変だと思うよ(笑)」と気さくに楽しいお話をして下さいました。

愛煙家の佐々木さん。煙草が手放せません。

佐々木史朗 株式会社オフィス・シロウズ代表
1939年、大連市生まれ。TBSテレビ演出部を経て、70年TBSとの共同出資による番組製作会社(株)東京ビデオセンターを設立、代表に就任。79年に(株)日本アートシアターギルド(ATG)の代表をつとめながら、多くの新人監督の作品製作を手掛ける。93年にオフィス・シロウズを設立、プロデューサー主導による監督作品の企画開発と製作、配給を開始する。04年日本アカデミー賞特別賞受賞。日本映画大学理事長を務めるなど、後進の育成にも力を入れる。

「優れた作り手を見つけること」がプロデューサーの一番大切な仕事
プロデューサーには3種類あると思う。1つは、僕のようなインディペンデントのプロデューサー。一人映画会社のようなものだね。「ナビィの恋」はその典型。企画から、資金集め、映画の制作。映画が完成したら、映画館にかけてくれる配給会社を見つけて、出資者に報告をしたり、利益を配分したりする「幹事」の役目も果たす。

2つ目は、映画会社やTV局の社員プロデューサー。ハウス・プロデューサーとも呼ばれる。自分たちで映画の企画を立ち上げることもあるけど、外部から持ち込まれる企画を検討して、映画の製作費用を出資するかどうかを決めることも多いね。

3つ目は、実際に映画を作っているプロダクションと呼ばれる会社に所属する人たち。ライン・プロデューサーという、映画を撮影する準備や進行、それにかかる日数やお金をコントロールする仕事をすることが多いね。こうした会社は、TV局や映画会社に頼まれて映画を作ることもあるけど、自分たちで企画を映画会社に持ち込んで、製作費を一部負担することもある。

プロデューサーというのは裏方の仕事。その内容は多岐にわたって千差万別だけど、その中で一番大切な仕事は、「優れた作り手を見つけること」だと僕は思っている。

プロデューサーに欠かせないのが携帯電話!
監督や俳優を始め、配給会社や出資者など
さまざまな人と連絡を取り合う。
スマホにするかどうか、佐々木さん思案中。

佐々木さんは、1979年にATG(注)の社長に就任。大森一樹や森田芳光、日活でロマンポルノの助監督をしていた根岸吉太郎、、ピンク映画の監督をやっていた高橋伴明、井筒和幸たちを次々に起用して話題作、ヒット作を生み出します。

40代の頃、自分はプロデューサーに向いている!と確信したね
31才でTBSを退社後、仲間とTV番組の制作会社、東京ビデオセンターを立ち上げたんです。この会社が7周年を迎え、記念に映画を作ろうということになったの。初プロデュース作「星空のマリオネット」を完成させたのはいいけど、いざ劇場にかけようと思ったら、どうしていいかわからない。

それで、ATGに配給の相談に行ったの。それが縁で、学生の映画研究会やポルノ映画出身の若手監督におもしろいのがいるから、ATGで監督として起用していきませんかと持ちかけたわけ。そしたら、ATGの社長も一緒にやって欲しいと頼まれて、最初は東京ビデオセンターとかけ持ちで始めたんですよ。

ATG時代、僕は40代だったけど、自分はプロデューサーに向いていると確信したね。自分がいいと思った才能が、どんどん花開いていく・・・自分の目に間違いはなかったなと思った。これがプロデューサーには一番大事な才能だからね!


佐々木さん企画の最新作。
「夢売るふたり」 9月8日(土)全国ロードショー
(C)2012「夢売るふたり」製作委員会 配給:アスミック・エース

その後佐々木さんは、1989年のアルゴプロジェクトを経て、オフィス・シロウズを1993年に設立、現在に至ります。最後に、子ども時代の映画の想い出と、子どもたちへのメッセージを伺いました。

子どもが映画を見るときは、少し背伸びをしてみるといいよ
小学校1年のときに終戦を迎えました。山口県の岩国で子ども時代を過ごしたんだけど、岩国にはアメリカとイギリスやオーストラリアのベース・キャンプがあって、アメリカ映画をたくさん見ることができたの。MGMのミュージカルをずいぶん見たね。フレッド・アステアはその頃の僕のアイドルだったよ。

子どもの時に「モダン・タイムス」を見たときは、ただただ大笑い。でも大人になると「モダン・タイムス」という映画の意味や、チャップリンがどんな作家だったがわかってくる。子どもが映画を見るときは、少し背伸びをしてみるのがいいと僕は思いますね。
ATGの映画も見てもよくわからないんだけど、わかったふりをしてたね(笑)。


佐々木さんが昨年企画した作品。
「キツツキと雨」 DVD¥4,700(税抜)
(c)2011「キツツキと雨」製作委員会
発売・販売:角川書店

時代が変わっても、映画の中の人間が残る
昔は、TVがなかったから映画を通じて世界を知ったもんです。でもいろんなものをTVで見られるようになったから、今の子どもは映画を見てもびっくりするようなことは、少なくなったんじゃないかな。TVは説明する媒体、しゃべる媒体なんですよ。映画は、映像を通じて意味を伝えようとする媒体なんです。スクリーンの中で描かれる「人間」を見て、感情移入して、何かを感じる・・・それが映画の醍醐味なんでしょうね。(聞き手:工藤雅子)

<子ども時代に影響を受けた映画として挙げてくださった3本>
「モダン・タイムス」
「キング・コング」
「アニーよ銃をとれ」

*注 ATG(アート・シアター・ギルド)
1961年から1980年代にかけて活動した日本の映画会社。当初は、フェリーニ、ゴダール、サタジット・レイなど他の映画会社とは一線を画す海外の芸術映画を配給した他、大島渚、吉田喜重らと日本の芸術映画を製作。後期には若手監督を積極的に採用し、後の日本映画界を担う人物を育成したことでも知られる。

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