ロサンゼルスー夏休みの過ごし方

「こどもと映画」をテーマに、世界各地からエッセイを月1回お届けいたします。第5回はロサンゼルス。

「公園に映画を見に行こう!」(夏休みの過ごし方)
附田斉子(Naoko Tsukeda)

アメリカの子どもたちの夏休みは、日本では考えられないほど長く、子どもには天国だが、親にとっては、辛い!?季節の到来だ。
ロサンゼルス空港の隣の小さな住宅街、エル・セグンドに住んでいる私たちの娘が通う小学校でも、6月末から8月末まで2か月以上も夏休みになる。いくら日本より休暇が長くとれるといっても、共働きの両親がそろって、2か月も休んで、子どもと一緒にバカンスに行くわけにもいかない。

そこでアメリカの親たちは、「サマーキャンプ」と呼ばれる、日中子どもたちを預けられる様々なプログラムを利用することが多い。アメリカ映画でよく、子どもたちが夏休み中、サマーキャンプに出掛けて行って、いろいろな経験や冒険をするというストーリーがあるが、実際は、泊りがけで屋外のキャンプに行くというよりも、半日、または1日のサマープログラムに家から通うというのが一般的なパターンだ。

プログラムには、サッカー、テニス、水泳などといったスポーツのほか、いかにもアメリカ的なサーフィン、チアリーダー、ミュージカル、映画&ビデオ制作、レゴブロックをマスターするというプログラムもあり、選ぶのに悩むくらいに多種多様なプログラムがそろっている。人気のあるプログラムは数か月前から満員になってしまうほどだ。

また夏休み期間中は、各コミュニティーがこぞって、様々なファミリー向けのイベントを企画しており、そんなイベントを一家総出でハシゴしている家族もたくさんいる。中でも人気があるのは、さわやかな夏にふさわしい、野外のイベントで、公園などでは、クラシックやロックのコンサートやミュージカルなどが行われている。

今年参加したそんなイベントの中で、娘が一番気に入ったのは、公園の中で行われた野外映画上映会だ。

何週間も前から、町のメインストリートでは、映画上映会のお知らせのバナーや、ポスターが掲示され、レストランや図書館などではチラシが置かれ、住民には学校に登録したメールアドレスを通じて映画上映会のお知らせが届く。チラシには、「お気に入りの枕や毛布をもってきてね!」と書いてある。チケットは大人も子どももひとり$4。

夕方まだ明るいうちに、毛布、クッション、ピクニックのバスケットなどを持ち、お気に入りの縫いぐるみの抱えた子どもの手を引きながら続々と家族連れが公園にやってくる。公園のど真ん中には巨大な映画スクリーンが設置され、手早く毛布や折り畳みの椅子を広げて場所取りをしたあとは、暗くなるまで、思い思いに、夏の長い午後を過ごす。

ジャンパーの前で

子どもたちは、公園の遊具であそんだり、空気をいれて膨らませたーーアメリカで大人気のジャンパーで、飛び跳ねまわったり、フェイスペイントや、アメリカ製お手玉(ビーン・バッグ=豆袋!)投げゲームに参加したり、公園の中を走るかわいい赤い列車に乗ったりと、楽しげに公園中を走り回っている。もちろん公園では、映画にはかかせない、ポップコーン、ピザ、ホットドッグ、ビールなどを売る屋台もにぎわっている。

フェイスペイント

夜9時をまわり、あたりがすっかり暗闇に包まれると、映画の始まりだ。今日の映画は、今年長編アニメーション部門でアカデミー賞を獲得した「ランゴ」。
さっきまで嬌声を上げて走り回っていた子どもたちも、スクリーンの前の芝生の上に敷かれた毛布の上に戻ってきて、じっとスクリーンを見つめている。まるで自宅のリビングルームにいるように、くつろいで、親、兄弟、友人たちと毛布にくるまり、目を輝かせながら。本編の上映前には、エル・セグンドの歴史をドキュメンタリー風にまとめた短編が上映される。普段、何げなく目にしている通りや建物、人物が紹介されるたびに,歓声や暖かい笑い声が上がる。

「ランゴ おしゃべりカメレオンの不思議な冒険
ブルーレイ+DVDセット」
Blu-ray発売元:パラマウント ジャパン
価格:4,935円(税込) 発売中

いよいよ「ランゴ」の登場だ。ピタッとおしゃべりが止み、大人も子どもたちもおかしなカメレオンの世界に引きずり込まれる。私たちは、昨年映画館に見に行ったが、娘は初めての屋外での映画上映という経験に興奮してか、カメレオンがおかしなことをするたびに、ほかの子どもたちと一緒に、ひときわ大きな声を上げて笑っている。

今や自宅のコンピューターや携帯電話などで、ひとりで映画を見ることができる時代に、町中の(もちろん、全員じゃないですけれど)住民たちと一緒に、外に寝転んで、毛布にくるまって、声を出して笑いながら映画を楽しむことができるんだなあと、ふと空を見上げると、きらきらと満天の星空が広がっていた。

附田斉子(つけだなおこ)
北海道出身。シネセゾン、ポニーキャニオンで映画買い付け、配給宣伝、映画製作に携わり、2001年にポニーキャニオン映画事業部の駐在員として渡米。ロサンゼルスを拠点に、映画買い付け、映像コンサルタント業務を続けている。アメリカ人の夫と娘がひとりいる。