夏休み、スイカのある風景

映画の中に出てくる料理をテーマにご紹介するコラムの4回目。

夏休み、スイカのある風景―『天然コケッコー』より―
伊藤麻衣子 Maiko Ito

子どもたちも夏休みに入り、本格的に猛暑の夏が始まりました。
夏休みと言えば帰省。私の両親は東京生まれなので、子どもの頃、友達がおじいちゃん、おばあちゃんの家に帰省するのをうらやましく思っていました。そのかわりに、長野に別荘(というほどではない)があったもので、そこで過ごす夏休みは田舎気分を味わえるワクワクする時間でした。山登りやキャンプ、牧場に行くのも特別な楽しみではありましたが、木登りや、川遊び、屋根に干したふとんの上で寝転んだり…田舎では普通のことが大好きでした。今月はそんな緑に囲まれた夏休みの日々を想い出す『天然コケッコー』を取り上げます。

右田そよは中学二年生。小中学校あわせてたった6人、山と田んぼに囲まれた小さな分校に通っています。その学校に東京から、大沢広海という転校生がやってきます。初めての同級生は、都会の香りのするイケメンさん。下級生の面倒見がよくて純粋なそよとは違って、ちょっと意地悪でとっつきにくい大沢くんにドギマギする日々が始まります。小さな町の暮らしではほとんどのことが筒抜け。どうやら大沢くんのお母さんと、そよのお父さんは昔なにかあったらしい…?そんな心配をしながらも、そよは少しずつ成長していきます。

右田一家は日本家屋で暮らしているのですが、そこにはトラックで八百屋さん(大沢くんのおじいちゃん)がやってきます。まん丸のスイカをまるごと買って、縁側で食べる。私にとって憧れの夏休みの風景がそこにはあるのです。スイカはそのままで食べるのが一番と思われる方も多いかもしれませんが、今回は子どもの頃、母に作ってもらうと本当にうれしかったスイカのポンチを作ります。夏休みスペシャルということで、私の甥の悠飛(ゆうひ)と姪のりん、従兄妹同士の二人に作ってもらいます。

八百屋さんでもあまり見なくなったまん丸のスイカ。今回は2Lサイズを買いましたが、小玉スイカも売っているので、人数に合わせて選んでください。ボウルに盛り付けるのであれば、切ったスイカでもOKです。

まずはスイカを半分に切ります。スイカ自体を器にするので
安定を考えて縞模様と直角に切ります。
計量スプーンをつかって、スイカの実を丸くくり抜いていきます。

二人とも夢中になってくり抜いていますね。
白い部分には達しないように加減を。
みかんの缶詰を加えます。
量はこれくらいで。
みかんの缶詰のシロップ、赤ワイン(ぶどうジュースでも可)を
少し加えサイダーをたっぷり入れます。
全体を混ぜて、味見をしてちょうどよければ完成です。
完成したスイカのポンチにご満悦の二人。
盛り付けは、ガラスにすると色味が映えます。
自家製ミントをちょこんと。
冷えていない時は、氷を入れてもよいですね。

美味しさのあまり、次々とおかわりをしてあっという間に
なくなってしまいました。ちなみに今回の付添いは、私の兄二人。
私たち兄妹にとっては懐かしい味でした。

『天然コケッコー』には昔ながらの生活や学校の姿があります。町で起きたことはみんなが知っていて、学校では年上の子が年下の子の面倒を見る。子どもたちは海に行くのも、お祭りに行くのもいつもみんな一緒。それが当たり前のことでも、時に煩わしくなることもあります。
そよは小学一年生のさっちゃんの面倒をいつもみているのですが、大沢くんと一緒にいたくて一度だけ冷たくしてしまいます。そしてさっちゃんは病気に。気に病んだそよがお見舞いに行くのですが、さっちゃんはスイカの皮でそよの顔をすりすりしてくれます。この町では「じっちゃんのスイカで顔をすりすりすると美人さんになる」という昔からの噂があるんです。なんとも優しい、夏の風景。子どもたちにはそうやって心の痛みを知って、そして癒されて成長していってほしいものです。

「天然コケッコー」
Blu-ray スペシャル・エディション9月5日発売/3,990円(税込)
DVD発売中 発売:アスミック/集英社
(c)2007 「天然コケッコー」製作委員会

伊藤麻衣子(Maiko Ito)
福島県白河生まれ。4人兄弟、男兄弟にかこまれて育つ。
今は映画などの宣伝と、沖縄の器の営業を生業に。料理上手の母を見て育ったので、気づけば料理が趣味に。今回はこのコラムで映画、器、料理と自分の好きなものをどう形にできるかが楽しみです。
美味日和~谷根千暮らし~

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