野菊の如き君なりき

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十代の悲恋を詩情豊かに描いた
名作小説の映画化作品

17歳の民子と15歳の政夫、いとこ同士の淡い恋心と、周囲の大人によって引き裂かれてしまったふたりの哀しい運命を、詩情豊かに描いた作品です。明治39年(1906年)に発表された伊藤左千夫の小説「野菊の墓」を名匠、木下恵介が監督した作品です。

年老いた73歳の政夫が故郷、信州を久しぶりに訪れ、60年前を回想するシーンから始まります。政夫の病弱な母の手伝いをするため、政夫の2歳年上のいとこ、民子がやってきます。小さい頃から仲の良かった政夫と民子は、いつも一緒におしゃべりしたり家の手伝いをして楽しく毎日を過ごしていました。

しかし年ごろのふたりが仲良くする様子をこころよく思わない大人たちから、あらぬ噂を立てられてしまいます。お互いの恋心に気づいた矢先、政夫は母によって (旧制)中学の寮に入れられ、民子と離れ離れに。そして民子は実家に戻され、心配した家族によって他家に嫁ぐことになります。そんな中、中学で勉強中の政夫は突然、電報で実家に呼び戻され、あまりにも悲しい事実を知らされます……。

旧家の息子と町屋の娘。いとこ同士で、民子は年上。当時はこんなことで恋心を抱くことすら許されなかったのですね。「女は手習い(勉強)より裁縫だ」などと言われるような感覚は今の子どもたちには不思議に映るかもしれませんが、明治の暮らしぶりを知るよい機会になるはずです。

「一緒にいると楽しい」「話せないとつまらない」たったそれだけの想いが、大人の思い込みで引き裂かれていく様子が何とも切ないです。連なる山々や広大な川、一面に広がる高台のわた畑など、信州の雄大な自然描写も清々しい。(上原 千都世)

上映時間:92分
日本語音声:あり
白黒/カラー:白黒
製作年:1955年
監督:木下恵介
出演:田中晋二
出演:有田紀子
メーカー:松竹
製作国:日本
原題:
備考:
親ゴコロポイント
  • 若い二人が恋心を口にしたり態度で表すことは「はしたない」とさえ言われてしまう、今では考えられないくらい恋をオープンにすることができなかった時代の淡く悲しい恋物語。小学生から「恋バナ」で盛り上がるイマドキの子どもたちには、どんな風に映るのでしょうか。映画で描かれる「好きな人を想う気持ち」は、時代を経ても変わらないような気もするのですが。
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