木を植えた男

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何十年もかけて荒地を森にした男の物語
詩情あふれる美しいアニメーション

フランスの著名な小説家ジャン・ジオノの原作を、カナダを代表するフランス生まれのアニメーション作家フレデリック・バックが映像化。不毛の土地に何十年もこつこつと木を植え続けたひとりの老人の姿が、静かな感動を呼ぶ作品です。

荒地と化していた南フランス、プロヴァンス地方を旅していた若者が道に迷い、寡黙な羊飼いの男に助けられます。彼の名はエルゼアール・ブッフェ。妻子を亡くした孤独な羊飼いブッフェは、「余生を何か人の役に立つことに使おう」「そうだ、荒れ果てて草木もろくに生えていないこの地が緑でいっぱいの森になるように木を植えよう」と考え、毎日100個、こつこつとどんぐりの実を植え続けていました。

若者と別れたあと、ふたつの戦争が起こったことも知らず、ブッフェはひたすら木を植え続けました。ブッフェとの出会いから30年以上、中年となった若者がその地を訪れると、かつて殺伐としていたプロヴァンスが、自然豊かで人々の笑顔があふれる幸せな土地に生まれ変わっていました……。

全てを破壊する人間がいる一方で、ブッフェのように木という「命」を心を込めて育てる人がいる。その対比を通して、周りに流されず信念を持って「ひとつのことを愚直にやり続けることの大切さ」を映画は教えてくれるようです。

印象派の名画が動いているような、繊細で美しい映像にも引き込まれます。色鉛筆で1枚1枚、丁寧に描かれた手書きの画は使用枚数何と2万枚。制作には5年半が費やされたそうです。優しいタッチの画ですが、嘆きや悲しみ、戦争の激しさも見事に表現。色鮮やかな自然、何十年にも渡る年月も自由に描く「アニメーション」の素晴らしさが堪能できます。1988年のアカデミー賞では短編アニメーション賞を受賞しています。(上原 千都世)

上映時間:30分
日本語音声:あり
白黒/カラー:カラー
製作年:1987年
監督:フレデリック・バック
声の出演:フィリップ・ノワレ
メーカー:スタジオジブリ
製作国:カナダ
原題:L’homme qui plantait des arbres
備考:フレデリック・バック作品集収録
親ゴコロポイント
  • 映画の中でブッフェは3年間で10万個のどんぐりを植えますが、その中で無事に木に育つのは1万本。その1割が森になり大地に緑を蘇らせます。目に見えない膨大な努力の素晴らしさ、大切さを子どもたちにも感じ取って欲しい。三國連太郎によるナレーションも心地よく、「良質な動く読み聞かせ」を聞いているような贅沢な気分が味わえます。