The BFG(ビッグ・フレンドリー・ジャイアント)

BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント

日本では9月17日から公開が始まった、「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」を、先日、ようやく観に行きました。原作は、前回の〈こども映画図書館〉でご紹介した、ロアルド・ダールの『オ・ヤサシ巨人BFG』で、監督は、あのスティーブン・スピルバーグです。なんと「E.T」以来、34年ぶりに作ったファンタジーだそうで、しかも今回、スピルバーグ監督が初めてディズニーとタッグを組んだ作品なのです。そうしたエピソードを聞くと、この映画、観てみたくなりませんか?

主人公は、ロンドンの児童養護施設で育った10歳の少女ソフィー。好奇心旺盛な彼女は、時に夜中に起きだしては、建物のなかを歩き回ったり、懐中電灯で本を読んだり、気ままな時間を過ごしていました。ある晩、いつもとは違う不穏な空気を感じたソフィーが、おそるおそる窓から外を覗いてみると、そこには、黒いマントをはおった身長7メートルはあろうかという巨人が立っていました。驚きのあまりベッドに飛び込んだソフィーでしたが、その巨人は窓から大きな手を伸ばして、ソフィーを毛布ごと持ち上げ、連れ去ってしまうのです・・・。

初めは、巨人に食べられてしまうと恐れたソフィーでしたが、幸い、彼女を連れ去ったのは、ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(BFG)と呼ばれる優しい巨人でした。彼は子どもたちに楽しい夢をみせるために、夜な夜な、街にでかけていたのです。しかしBFGが住んでいる巨人国には、彼とは別の性質を持った、人間を食べる9人の凶暴な巨人も住んでいました。BFGは、ソフィーが彼らに見つからないように、細心の注意を払います。孤独だった2人は徐々に心を通わせはじめ、BFGは、自分だけの秘密の場所であった夢の国に、ソフィーを連れていくのです。ある日、他の巨人たちが人間の子どもを食べにイギリスへ行くという話を聞きつけたソフィーとBFGは、何とかして阻止しようと、アイデアを練り始めます。2人が思いついたのは、BFGの特技を使ってイギリスの女王に助けを求めることでした。いったい、どんな作戦なのかというと・・・それは、本編を観てのお楽しみです。

今回、映画を観ていて感心したのは、映像表現の素晴らしさでした。ロンドンの夜の街なみを、人に見つからないように歩き回るBFGの変幻自在な姿や、人間と比べると何もかもが巨大な道具で溢れたBFGの家の様子、夢の国における不思議な仕掛けなど、ワクワクするシーンが沢山あります。とりわけ、BFGの仕事部屋の棚に何百と並んでいる、夢が入った色とりどりのガラス瓶が素敵でした。私たちも、BFGに夢を送り込んで欲しいですね。映画の後半、舞台がバッキンガム宮殿に移ると、さらに楽しいシーンが続きます。料理人たちの労力と執事たちの忠実な給仕によって、BFGに供される大量の朝ごはんや、謎の飲み物プップクプー(原作では、泡立ちエキス)を飲んでしまったエリザベス女王と家来たちと、コギー犬のチャーミングな反応には、ついつい笑みがこぼれます。

オ・ヤサシ巨人BFG (児童図書館・文学の部屋)

それにしても、映画版「BFG」には、ある種の懐かしさを感じました。以前ご紹介した、「チャーリーとチョコレート工場」や「ファンタスティックMr. FOX」といった、少し毒気のあるダール原作の映画と比べると、非常にオーソドックスな作りのファンタジーです。また、巨人退治で女王に助けを求めるという発想も、ちょっと古風な感じがしました。でも、ロアルド・ダールの経歴を考えると、これは当然なのかもしれません。彼は第二次世界大戦中に、イギリス空軍のパイロットとして活躍した人ですから。今作、「BFG」を観て、原作者ロアルド・ダールに興味を持ってくれる子どもたちが増えてくれると嬉しいですね。そして次には、ぜひ原作にも挑戦して欲しいと思います。

Text by Riko Yamoto 矢本理子
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