
映画のプロに聞く!日仏思春期映画でアート映画デビュー!
アンスティチュ・フランセ東京はフランス語学習の他に、映画や講演会などを通して、フランス文化や人との出会いを提供する施設です。長年映画の上映会やイベントの企画・運営に携わるアンスティチュ・フランセ日本 映画プログラム主任の坂本安美さんに、フランス映画祭特別関連企画「彼らの時代のすべての少年、少女たち」の狙いと、思春期の子どもたちのアート映画デビューについてお話を伺いました。
日仏の思春期映画の系譜をたどる試み
「毎年1年前からフランスの批評家やプログラム担当と意見を交換して企画しています。今回は思春期をテーマにしたプログラムの提案があり、私にも思春期の子どもがいるので、これはおもしろい企画だと思いました」と坂本さん。フランスには思春期の映画の系譜があり、それを改めて辿ること、また日本映画と一緒に紹介することで、2つの国の若者を比較することができ、興味深いのではないかと思われたそうです。若者や子どもを描くことで、映画の持つ原初の力を子どもたちが引き出してくれる・・・そんな相互作用を持っているのではないかと坂本さんはおっしゃいます。若者を描くことで映画も若返ることができるのです。
作品選定にあたっては、単純に何歳から何歳という数字でくくるのではなく、「何かに目覚めていく年齢」を基準にして選んだそうです。性や、他者の存在、自分と違う世界への恐れといった、子どもから大人になるためのイニシエーション(通過儀礼)を体験する若者が描かれている作品を取り上げています。
思春期の子どものアート映画デビュー
「最初はぽかんと見てしまうかもしれませんが、心に残るものが必ずあるはず。若い時に見るべき映画ともっと出会って欲しい」と坂本さんは言います。そのためには、学校で夏目漱石を読むように、映画も学校での教育が大切になってきます。実際フランスでは小学校から映画を見て学ぶ授業が20年以上前から行われています。
「教育というと堅苦しく聞こえますが、サジェスチョン、提案が大切です。絵画も一緒ですが、まずは触れてみることから始めてください。そのためには専門家がどの映画を見るとよいか提案していくことが大切です。」
坂本さんは息子さんに「これを観なさい」という強制はせず、ただ早くからいろんな映画を一緒に見てきました。ある意味映画の“英才教育”を受けた息子さんは、フランソワ・トリュフォー監督の「大人は判ってくれない」と今回上映される「僕の小さな恋人たち」に「つながり」を見つけたといいます。ぱっと見て意味が分からなくても、続けて見ることで、いろんな映画がつながって、理解が深まっていくようになるといいます。
また学校や親にがんじがらめになっている子どもたちが、暗闇の中で映画というフィルターを通して、自分と向き合い、模索する時間が、思春期には大切だと坂本さんは言います。「自分自身の力で何かを見つけていくことが重要です。子どもたちは、自分の年齢に近い主人公の映画には親近感を持つものです」とも。
最後に坂本さんに今回の企画の中から絶対見逃さないで!という3本を勧めていただきました。ぜひ新しい世界に映画を通して出会ってください。

冷たい水 ©DR
監督:オリヴィエ・アサイヤス
若さ、怒り、欲望といった疾走感にあふれた作品です。ロック・ミュージックの名曲がふんだんに使われているとにかく格好いい映画です。

台風クラブ ©DR
監督:相米慎二
相米慎二監督の傑作中の傑作です。制御できない気持ち、欲望をもてあます若者たちが台風というやはり制御できない自然現象の到来によって、高揚し、自然と一体化する姿が素晴らしいです。
僕の小さな恋人たち
監督:ジャン・ユスターシュ
思春期を描いた作品の傑作です。坂本さんのお子さんのように一緒に「大人は判ってくれない」も御覧になってみてください。
詳細は公式HPにて(開催中・6月30日まで)
http://www.institutfrancais.jp/tokyo/events-manager/cinema1505170630/
© DR 「僕の小さな恋人たち」