
トリノ映画博物館探検!
イタリア北部、トリノにあるとっても楽しい映画博物館に行ってきました。私たちが普段目にする博物館とは全くイメージの違う、驚きがいっぱいつまったユニークなトリノ国立映画博物館をご紹介します。

2000年にオープンした映画博物館
まず目につくのが、その建物の形。とんがり屋根の細長い建物で、博物館というより教会のようです。それもそのはず、今から150年ほど前にシナゴーグ(ユダヤ教の教会)として設計された建物を使っているからです。スイス出身の映画セットデザイナー、フランソワ・コンフィーノ(François Confino)によって、建物内部が大胆に改装され、2000年に国立の映画博物館としてオープンしました。

1889年に建物が完成した当時はヨーロッパで最も高いレンガによる建築物だったそうです。地上85メートルにある展望台へは、建物中央に設置されたガラス張りのエレベーターで上がります。内部は吹き抜けなので、ちょっと足がすくむ思いです。展望台からは碁盤の目のように整備されたトリノの町が一望できるほか、アルプスの山並みを遠くに見ることができます。

目を見張る吹き抜けのテンプルホール
最初の展示コーナーは、「映画の考古学」。影絵に始まり、マジックランタン、クロノフォトグラフィー、キネトスコープなど、映画が生まれる前の時代に人々が絵を動かして楽しんでいた珍しい道具や機械が、たくさん展示されています。楽しいおもちゃ箱のような展示室です。

そして驚きなのが、3Fのテンプルホール。天井屋根まで75メートルもの吹き抜けで、息をのむような空間です。

ホールには寝椅子が置かれていて、天井に投射される映画をくつろいで見ることもできます。

またテンプルホールでは、らせん状の広いスロープの壁面にも展示がされています。訪ねたときにはアカデミー賞主演女優賞の企画展示が行われていました。

第1回から最新の受賞者まで、86回分の女優たちの写真やポスターが飾られていました。自分が知っている女優を探して、スロープを上りながら、ひとつひとつ展示を見ているとすっかり時間のたつのを忘れてしまいます。

4Fは「シネママシン」というコーナーで、映画がどうやって作られていくかの過程を脚本、撮影、録音、編集、特殊効果などに関する様々な展示と共に紹介します。
子どもたちのためのワークショップや上映会がいっぱい
映画教育担当のパオラ・トラヴェルジさんに、子ども向けの活動について聞きました。映画博物館はトリノにあるエジプト博物館に次ぐ人気の博物館で、イタリア中から子どもたちが見学にやってくるとのこと。年間2000グループを受け入れ、解説付きで館内を見学することができます。1時間半のガイドツアーは、学年にあわせてプログラムの内容が異なります。この他、短編映画の制作、特殊効果、デジタル合成体験、映画と音楽など、数多くのワークショップも行われています。

2週に1回日曜の朝には、併設される映画館で、子ども向け上映会が行われています。料金は大人も子どもも3ユーロ(420円ほど)で、新しい大ヒット作品からクラシックの名作、アート映画と幅広い作品が上映されているそうです。

パオラさんによると、もっといろんな活動に取り組みたいそうですが、潤沢な予算があるとは言えず、教育担当3人で出来ることには限りがあると、少し残念そうに話してくれました。でも私たちから見れば、子どもたちが映画に触れ、映画を知ることのできる、とてもうらやましい環境。ため息をつくばかりでなく、いつか日本でもこんな楽しい場所を作れるようがんばらなければと思いを新たにしました。
そして最後に・・・博物館を夢中で歩き回って疲れたら、ぜひトリノのもう一つの名物である、チョコレートを楽しみにカフェへどうぞ! (文・写真:工藤雅子)
