水俣・患者さんとその世界 

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日本の公害の原点-- 水俣病の患者さんたちと
家族の姿を見つめたドキュメンタリー

水俣病患者たちの日常生活と家族の姿を見つめ、社会への訴えを続ける彼らの姿を主題にドキュメンタリーを撮り続けた土本典昭監の渾身の「水俣」第一作です。この作品の完全版を2時間に短縮してあります。

不知火海に流された有機水銀が原因で発生した水俣病。1956年発生当時は原因不明の奇病とされましたが、次第にその原因が水俣市にある企業、チッソによる工場排水だと明らかになります。しかしその公式発表までは発生から13年を要し、企業と政府の対応は、患者とその家族にとっては納得のいくものではありませんでした。水俣病患者家庭のうち29世帯は、チッソを相手に裁判を起こし、また「一株運動」としてチッソの株を1株だけ買い、経営陣が揃う株主総会に出席して直接の抗議行動にでます。

冒頭から繰り返し、不知火の海の豊穣さが描写されます。漁師たちによるタコ漁の実践、ボラ漁のとき、「おいしくなるように」(漁師の言葉)まるで人間の食べ物のように気を遣って作る撒餌(まきえ)作りの様子。モノクロ映像ながら、風光明媚な土地の海の輝きは画面からしっかり伝わってくるし、また海、人、生き物の一体感で、しばし、このドキュメンタリーのテーマを忘れそうになります。しかしその豊穣だった海が汚染され、最初は猫に奇病が現れ、そして人々も病に倒れていきます。その過程は熊本大学の研究と、患者を持つ家族の証言から、生々しく描き出されます。特に胎児性水俣病患者の子どもたちの重篤な様子と、子どもたちのそれぞれの家族の証言には胸を衝かれます。母親たちが子どもを見つめるまなざしには、なんともいえないさまざまな感情が交錯します。カメラはごくさりげなく自然にそこにある、といったように、淡々とそんな患者と家族たちの姿―泣いたり、笑ったりーを捉えます。しかし、ラストシーン近くの株主総会では爆発する患者たちの叫びを、しっかりと記録します。

ナレーションもなく、言葉にしても水俣の方言が字幕もなくそのまま使われているので聞き取りやすいものではありません。そのテーマも含め、とっつきやすい映画ではないことは確かです。しかし、日本の歴史という意味でもドキュメンタリーという作品に触れるという意味でも、貴重な作品です。ベルリン映画祭銀賞を受賞。

上映時間:120分
日本語音声:あり
白黒/カラー:白黒
製作年:1971年
監督:土本典昭
メーカー:シグロ
製作国:日本
原題:
備考:
親ゴコロポイント
  • 子どもを持つ立場として見ると、水俣病患者のお子さんの姿は自分の子どもと重なってさまざまな感慨を生み出します。そしてその親御さんのご苦労を思うと……。また、水俣病発生当時、病気を表ざたにしないように圧力がかかった話をはじめ、住民同士の相反する思い、企業、政府の立場や振る舞い方になにやらいつの時代も同じような? と思わずにいられない部分も。歴史は繰り返す。私たちは映画からいろいろなことを学ばなければなりません。
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