ぼくたちのムッシュ・ラザール

担任教師の突然の死にゆれるモントリオールの小学校
中年の代用教員ラザールと子どもたちの物語

ある冬の朝、教室で女教師が首つり自殺をし、学校は騒然となります。子どもたちはショックを受け、学校は彼らの心のケア、後任探しに追われます。そこに、アルジェリア移民の中年男性バジール・ラザールが校長を訪ね、「新聞記事をみました。お困りでしょう。お役に立ちたい」と申し出、代用教員として採用されます。

カリスマ性がある訳でもなく、朴訥で野暮ったいラザール先生は、授業も時代遅れ。しかし、生徒たちと真摯に向き合う姿に、やがて子どもたちは心を開き始めます。

「妻は脅迫されていた。やがて家族にも脅迫が・・・」。弁護士を伴い裁判所で語るラザール。母国で教師をしていた妻が書いた本の中で、「国民和解政策」を批判したことから脅迫にあい、ラザールは家族を安全なカナダへ出国させようと、先にこの国にやってきたのです。しかし、彼が国を離れている間に家族は放火にあい全員が死亡。彼は天涯孤独となってしまいます。

学校は心のケアは心理カウンセラーに任せて、教室では話さないようにラザールに伝えますが、家族を失った悲しみを知るラザールは、死と向き合う子どもたちの痛みを理解し、寄り添いたいと思います。ある日ラザールは子どもたちに言います、「自殺の原因を探してもどこにもない。教室は友情と、勉強、思いやりの場、それぞれの人生をわかちあう場だ。絶望をぶつけ合う場所ではない」と。

字幕作品で「死」という難しい題材を扱っているので、子どもが見て単純に楽しめるという作品ではありませんが、御茶ノ水大学で発達心理学を教える榊原教授によれば、小学校高学年なら「死」についてもある程度理解できるようになるそうです。

「教育の現場」の理想形とは?を考える上で、示唆に富んだ作品でもあります。子ども、教師、親がそれぞれどのように向き合い、信頼関係を築くことができるのか?単純な答えはそこにはありません。しかし他者への深い共感こそが、より良い時代へと私たちを導いてくれる道標であるに違いありません。深い悲しみを知ったムッシュ・ラザールの他者への優しさに、涙が流れます。

親子、教育関係者、コミュニティのメンバーであるすべての人々に見て頂きたい秀作です。(工藤雅子)

公式HP
劇場情報

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上映時間:95分
日本語音声:なし
白黒/カラー:カラー
製作年:2011年
配給:ザジフィルムズ、アルバトロス・フィルム
製作国:カナダ
原題:Monsieur Lazhar
備考:
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