何度も何度も書き直す

いつも執筆に使うシャープペンと何度も稿を重ねた台本たち

脚本家/映画監督
平松恵美子

1967年生まれ。岡山県出身。92年鎌倉映画塾に第一期生として入塾。93年の在塾中、見習いとして『学校』(93/山田洋次監督)に参加。『十五才 学校Ⅳ』『武士の一分』『母べえ』でそれぞれ第24回、30回、32回日本アカデミー賞脚本賞を受賞。2013年『ひまわりと子犬の7日間』で監督デビュー。

きっかけは1枚のちらし
大学を卒業後、東京でOLをしていた平松さんが、鎌倉映画塾の第一期生募集のちらしを目にしたのは、そろそろ実家に帰らなくてはと考えていた頃だったそうです。しかし、映画の製作現場を近くで見てみたいと当時松竹の大船撮影所にあった映画塾に入ります。実習で撮影に参加してみて、興味はさらに高まり、塾の先生に頼んで『学校』の現場で見習いを始めます。それが映画の仕事につくきっかけでした。助監督として山田洋次監督の作品に関わるようになり、撮影現場でのセリフの直し、脚本を書くための取材、そして共同で脚本執筆もするようになりました。

最初はシノプシスづくりから
最初にシノプシスと呼ばれる、あらすじを作ります。平松さんの書くシノプシスは少し長く13000字ぐらいあるそうです。どんな俳優さんに演じてもらうかも想定しながら、書いていきます。その後、映画の製作が本格化しはじめたら様々なところへ取材に行きます。ひとつの作品のために何十冊もの本を読むなど下準備も脚本家の仕事なのだそうです。
コンストラクションと呼ばれる作業があり、ひとつの場面の中でどんなことを表現するかを決める箱書き、そしてセリフ、ト書きが入って脚本になっていきます。監督と話し合いを重ね、第1稿、第2稿となんども修正をしていき、撮影用の決定稿を作り上げます。

書くと決めたら他のことは何もしない
たとえ1行も書けなくとも、机に座って3日間ぐらい集中して執筆をするそうです。愛猫と遊ぶことはあっても物語について考え続ける、家からもほとんど出ないそうです。朝から、そうしていると夕方には少しずつ進んでいくのだとか。執筆の過程のほとんどは苦しいとおっしゃいますが、お気に入りのシーンを書くのは楽しく、そのために他の部分を苦しみながら生み出していくのだそうです。

恥をかくことをおそれてはいけない
脚本家になるために必要な資質は?とおたずねしたところ、「自分の書いたものを人に見せなくては仕事は始まらないしその脚本には自分自身が出てしまうので、恥ずかしいことではあるけれど、それを気にしていてはこの仕事はできない」と平松さんはおっしゃいます。暴力的な描写や笑いながら人を殺すようなシーンは自分には書けない、だから職業的脚本家に徹することはできないかもしれませんね、とも言われます。日常生活では本を読むことも、映画を観ることも、人と話すことも“これは使えるかも”とすべて仕事につながっていくので、純粋に楽しめないかも・・・と笑って答えてくださいました。


野生のエルザ 1,480円(税込) 発売中
発売・販売元:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

映画感想ノートが100冊にも及ぶ
子どもの頃にご覧になって印象に残っている映画についてうかがったところ、中学生からつけている “映画感想ノート”が自宅に100冊くらいあると教えてくださいました。お父様とよく映画館で映画を見ていたそうです。動物好きの平松さんが、小学生のころ見て衝撃だったのは『野生のエルザ』(1966年)だそうです。ライオンの子どもエルザが、ミルクを人間の手から飲む、人間の体温の温かさに触れる場面や、野生に戻りたいというエルザの強い欲求など、今でも印象に強く残っているシーンがいくつも思い出されるとおっしゃいます。


『ひまわりと子犬の7日間』発売中 価格:4,935円(税込)
発売・販売元:松竹
(C)2013「ひまわりと子犬の7日間」製作委員会

ていねいに人生を送る人々の暮らしが自然に描かれ、いつしか物語にはいりこみ涙が溢れ出てくる監督作『ひまわりと子犬の7日間』のように、いつのまにか平松さんの映画に対する深い思いに引き込まれていました。

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≫赤澤環さん スクリプター
≫小野寺修さん 録音技師
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≫山田実さん 衣装
≫安宅紀史さん 美術
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