パパ・ママ映画ジャーナリストおすすめの2013年夏休み映画8本!

パパ・ママ映画ジャーナリストおすすめの2013年夏休み映画8本!

いよいよ夏休みがスタート! お子さんと映画を見る機会も多いこの季節。「さて、何を見よう?」という方のために、お子さんのいらっしゃる映画ジャーナリストのみなさんに、注目作と見どころを教えて頂きました。

森直人さん、おすすめの3本
うちの息子はまだ1歳なので、親子いっしょの映画鑑賞はもうちょっと先のお楽しみ。今年の夏は、地球を破滅の危機から守るために戦うハリウッド超大作がたくさん公開されますが、このたぐいの作品は放っておいても観るようになると思うんで、それ以外の中からチョイス。

©2013二馬力・GNDHDDTK

まずは『風立ちぬ』(公開中)。意識的に児童向けを志す宮崎駿アニメの王道とは違い、完全に大人のオトコ泣かせの傑作でしたが、激動の時代の中で、「いま、自分にやれること」だけをシンプル&ストレートに貫いて生きる主人公の姿は、子どもの記憶のどこかに残るかもしれないな、と。あと、やっぱり風の柔らかな描写などすばらしいです。

ジブリを挙げたのだから、ディズニー/ピクサーのアニメーション『モンスターズ・ユニバーシティ』(公開中)も推したい。『モンスターズ・インク』から12年、大学時代のマイク&サリーを描く「前史もの」の続編。なんとスクールカースト(生徒たちの序列や階層)を軸にした学園映画の体裁を取っており、その中で、自分の資質やコンプレックスに向き合うこと、人にやさしく、仲間を大切にすることなどがわかりやすく説かれています。学歴偏重の態度にも批判的なまなざしがあり、教育的にもステキな内容でした。

©2011 PLAYING PRODUCTIONS, INC.

最後は唯一の実写映画で『スマイル、アゲイン』(8月17日公開)。ジェラルド・バトラー演じる男が、別れて暮らしていた妻や息子との絆を取り戻そうとするヒューマンドラマ。これを自分の子どもに観せれば、ダメなお父さんでも大目に見てくれるようになるんじゃないかと(笑)。ちなみに同じ監督の2006年作品『幸せのちから』は「父と息子」映画の最強の一本。ぜひ併せてDVDで観ることをおすすめします。

落合有紀さん、おすすめの3本
今夏は傑作アニメーションに注目です。まずは、宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』から。美しい飛行機作りに情熱を燃やした実在の人物、堀越二郎の半生を見せつつ、彼が愛した菜穂子との出会いと別れを織り交ぜてロマンチックな逸品に。私は愛する人のそばに少しでも長くいたいと願う菜穂子がいじらしくて、彼女の小さなわがままが切なくて、ふたりのソウルメイト的な夫婦のあり方が強く印象に残りました。大人と子どもでグッと来るポイントがはっきり分かれますが、年を重ねていくとさらにわかる場面が増えるので、繰り返し見せたい、見たい映画のひとつになりました。

©Folimage Lunanime Digit Anima

さて、次はフランス産アニメ『パリ猫ディノの夜』(公開中)。声をなくした少女のゾエちゃんと、雄猫のディノの物語。夜になるとディノは散歩に出掛ける振りをして、怪盗ニコの相棒に変身します。日本語字幕での上映になりますが、子どもは言葉がわからなくたって滑らかな猫の動きや、忙しいママンに傷つく少女の心理に感じるところがあるはず。
『風立ちぬ』もそうですが、まだ子どもがストーリーを理解できなくても、映像や疑問や衝撃が鮮烈に頭に残るのなら、価値ある体験、のちに糧になると思います。

©Media Asia Films, Beijing Antaeus Film, Shanghai TV Media, Beijing Meng Ze Culture & Media, J’Star Group

最後は、伝説のアクション・スター、故ブルース・リーの青春物語『李小龍(ブルース・リー)マイブラザー』(公開中)。兄を心から尊敬する弟が製作した映画で、兄弟愛とアクションが凝縮された楽しい一作。リーの名作『燃えよドラゴン』も見せれば、カンフー好きになっちゃうかも。強いってかっこいいもんね。

金原由佳さん、おすすめの3本
この夏、憲法9条の改正や徴兵制度、国防軍といった言葉が一部の政治家から出てくるようになってきました。大人も思考停止にならず、子どもたちに「戦争」とはどういうものなのか、映画を通して伝える良い機会です。

©2013「少年H」製作委員会

『少年H』( 8月10日公開)は太平洋戦争に突入する時代の物語ですが、全編通してユーモラスです。主人公Hは好奇心旺盛な腕白坊主で、お父さんは洋服の仕立て職人で、神戸という土地柄、様々な国の人と交流があり、複眼的な視線の持ち主です。何より伊藤蘭さん演じるお母ちゃんの天然ボケがかわいく、キリスト教の信仰で培った「愛」の精神でどっしりしている。クライマックスの神戸大空襲は原作者の妹尾河童さんと同い年だった私の父も被災しましたが、その体験談は映画の描写よりもっと悲惨でした。
妹尾さんと同じ年の小説家、野坂昭如さんも同じ神戸大空襲で養父母を失い、その後の疎開先で妹が餓死、それがスタジオジブリのアニメ『火垂るの墓』という作品になりました。見比べてみてはどうでしょう?


©2012 Hallowell House, LLC. ALL RIGHTS RESERVED

『素敵な相棒 フランクじいさんとロボットヘルパー』(8月10日公開)はおじいさんの話ですが、この人がかつての大泥棒で、ヘルパーのロボットを仲間に引きずり込もうとする奇天烈な物語。遠くに住む子どもより、毎日の食事を心配し、用意するロボットと心通わす姿に考えさせられます。

© 2012 FOX STAR STUDIOS INDIA PRIVATE LIMITED. ALL RIGHTS RESERVED.

『スタンリーのお弁当箱』(公開中)も食事が主役。小学生のスタンリーは理由あって学校に弁当を持ってこないのですが、同級生たちが毎日分けてくれます。ところが、それを目の敵にする先生がいて、ひと騒動が。スタンリーと先生は同様に食事を作ってくれる人のいない寂しさを抱えていますが、子どものスタンリーの方が強くたくましいのが印象的です。劇中に出てくるインド料理はどれもこれもおいしそうで、鑑賞後、お子さんにカレーをねだられることを覚悟しておいてください。