作る人と伝える人 ドキュメンタリー

作る人の視点と伝える側から見る
ドキュメンタリーの魅力とは?

 

【作る人】
ドキュメンタリーの制作に30年以上かかわってこられたプロデューサーの橋本佳子さんにお話を伺います。「フタバから遠く離れて」が現在公開中です。

 

映画とTV

橋本さんは、ドキュメンタリーにTVも映画も違いはあまりないとおっしゃいます。
ただ映画は、家でスイッチを入れれば見られるTVと違って、映画館に足を運びお金を払ってみるもの。それだけの価値をお客様に感じて頂くための工夫が必要とおっしゃいます。また、橋本さんがプロデュースされた映画「フタバから遠く離れて」は、撮影終了から完成まで9ケ月以上、劇場公開までには1年半近い時間がかかっています。作品やテーマに普遍性がないと古くなってしまって、成り立たないといいます。
一方、TVの場合は放送のギリギリまで編集をするとのこと。それは、TVではニュースや情報の新鮮さが求められるからです。「今」を切り取るのがTVの特徴だそうです。

ドキュメンタリーとフィクション

ドキュメンタリーとフィクションの違いをあまり意識しないと橋本さんはいいます。「それは表現全体にいえることですが、何をどう伝えるかという方法論の違いでしかないと思います。例えば、北海道富良野を舞台にしたテレビドラマ『北の国から』はフィクションですが、20年間のドキュメンタリーでもあると言えます。」
ただ、橋本さんは人間の内面にある闇をドキュメンタリーでとらえるのは難しい時があるとおっしゃいます。そこで、母親の子育てを描いたTV番組(NHK「男と女の民主主義」2007年)では、ドキュメンタリーとフィクションを同時に構成するという試みをしたそうです。
ドキュメンタリーを特徴づけているのは、「予想もしないことが起きること」に立ち会うという圧倒的な「現場の強さ」にあるとおっしゃっていました。そして、ドキュメンタリーの魅力を橋本さんは、「人間と出会うこと」と教えてくださいました。

子どもと楽しむドキュメンタリー

「レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏」DVD発売中 ¥3,990(税込)
発売元:株式会社ジェイ・スポーツ・ブロードキャスティング
販売元:東宝

橋本さんおすすめの映画は「レフェリー 知られざるサッカーの舞台裏」。ユーロ2008のサッカー試合の審判たちを追ったドキュメンタリー。サッカー好きのお子さんなら、興味深く見ることができるでしょう。

橋本佳子
1985年よりドキュメンタリージャパン代表を20年間務める。ドキュメンタリー番組を中心に数多くの作品をプロデュース。放送文化基金個人賞、ATP個人特別賞、日本女性放送者懇談会賞受賞。映画プロデュース作品は「遠足 Der Ausflug」、「パンダフルライフ」、「ニッポンの嘘」、「ひろしま 石内都・遺されたものたち」など。

 

【伝える人】
伝える側から観る。ドキュメンタリーの魅力とは?
今年8月にスタートした日本で唯一のドキュメンタリー雑誌『neoneo』の編集主幹
萩野亮さんのお話です。

 

雑誌『neoneo』のキーワードは「つなぐ」

雑誌『neoneo』は長くドキュメンタリーの制作に携わってきた伏屋博雄編集長が2001年に始めたメールマガジンを引き継ぐ形で、今年からウェブサイトと雑誌の刊行をスタートしました。
お話を伺った編集の萩野さんは、ドキュメンタリーにはとりわけ「第三者の目」が重要だとおっしゃいます。ドキュメンタリーは作り手の視点が、強く見るものに働きかけるものですが、だからこそ観客と作り手をつないで、映画を見る新しい「視点」を提供することが大切だといいます。
また、ドキュメンタリーは取材対象や題材が重要ですが、それが全てではありません。監督の作家性ばかりが目立ち、題材が置き去りになるのも好ましくありません。その両方をつなぐような作品や視点を紹介したいと萩野さんはおっしゃいます。

子どもがドキュメンタリーを見るときに気をつけたいこと

「まず作品によっては、ショッキングな映像が映っているものもあるので、内容を確かめてから見せてあげてください」と萩野さん。ほかにも「映っているものが事実とは限らないことや、作っている人が必ずいて、その人の考えや視点が反映されていることを教えてあげてください」とも。子どものメディアリテラシーを育てる上で、ドキュメンタリーは恰好の映画です。

子どもにおすすめのドキュメンタリー

『保育園の日曜日』(c)1997 カサマフィルム/『女神さまからの手紙』(c)1998 カサマフィルム

佐藤真監督の娘さんが通う保育園の日々を撮影した作品「保育園の日曜日」。もう1本の「女神さまからの手紙」は8ミリで撮影された子どもの成長記録です。
特に「保育園の日曜日」は誰もいないのに動く跳び箱や、突然ぱっと消える子どもたちなど、楽しいシーンがいっぱいです。

萩野亮
neoneo編集主幹。映画批評。編著に『ソーシャル・ドキュメンタリー 現代日本を記録する映像たち』(フィルムアート社)、共著に『アジア映画の森』(作品社)がある。そのほか雑誌等でドキュメンタリーについて多く書いている。

neoneoウェブサイト 雑誌『neoneo』創刊号は全国の書店、ミニシアター等で販売中。
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ドキュメンタリーってどんな映画?の記事はこちら
©2012 Documentary Japan, Big River Films

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