香港の旧正月

今月の「こども地球儀」は香港在住の中濱久世さんです。写真は、学校でのFai Chunコンテストの作品。Fai Chunって何?と思った方は、中濱さんの原稿を読んでみてくださいね。

香港の旧正月
中濱久世(Hisayo Nakahama)

今年は2月10日が香港の旧正月の元日になります。旧正月が近づくともともと華やかな色彩の香港の街がさらに派手になっていきます。旧正月には様々な伝統的な習慣がありますが、特に飾り物には力が入っています。中でも一番早く飾り付けられるのが「迎春(fai Chung)」とよばれるもので、おめでたい言葉が書いてある縦長の赤い紙で、家の中にも貼って飾るのですが、ショッピングセンターやスーパー、学校、オフィスビル、ホテルなどにも飾ってあります。

伝統的なものは紙の色は赤で文字は縦書きで、そこに金やピンクの模様がはいっているものですが、現在では英語で書かれた横書きのもの、キャラクターのものなどいろいろあり、書かれている言葉も一般的には「出入平安(無事に過ごせるように)」や「龍馬精神(元気ですごせるように)」などから商売繁盛や学業成就など貼られる場所によっても違いがでてきます。
子供達も幼稚園や学校で手作りの「迎春(Fai Chung)」のコンテストを行うところもあります。インターナショナルスクールでは国際色豊かな「迎春(fai Chung)」をみることができます。

ショッピングセンターの旧正月用のデコレーション

他にも飾り物として欠かせないのが縁起のいいといわれる植物で、旧正月の新年に必ず飾られるのが桃の花と金柑の鉢植えです。桃の花は初春に咲くおめでたい花とされ、中国語の事業発展の意味の言葉とも音に関係があり、金柑の鉢植えも同様に中国語で音が「吉」という字と同じことから縁起がいいとされています。年末には数日間ヴィクトリアパークという公園で花市が開かれ、とくに大晦日には夜通し朝まで行われています。

旧正月には夏休みやクリスマス以上に映画を観る習慣があります。80年代の香港映画産業が最も華やかだったころには、旧正月のための映画がいくつも作られ、おめでたい言葉をタイトルに使い、内容はスター総出演のどたばたコメディで、最後はハッピーエンドというもので、日本でも「福星」シリーズとして公開されたものもあります。90年代以降海賊版のDVDが流通したり、娯楽も多様化し映画産業自体が勢いがなくなり、2000年以降は映画スターに対する感覚が希薄になり、だんだんとオールスターのおめでたい映画の習慣も無くなってきましたが、それでも1年の中では最も映画を観る人が多い季節といえます。

ただ今年はその伝統を感じさせるような映画が旧正月映画として公開されます。香港のコメディ映画のスター周星馳(チャウシンチー)監督作の「西遊」という作品で、様々なスターがおなじみのキャラクターで出演することもあり、子供から大人まで楽しめる旧正月らしい作品だと思います。

中濱久世(なかはまひさよ)
大学で仏文専攻後、90年代半ばにパリ留学。現地で香港人と結婚後、中国、香港と移り住む。現在はインターナショナル系の幼稚園で教師をし、大阪のラジオ局の電話レポートに出演中。

【過去の記事】
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