フィンランドのBabyKino

「こどもと映画」をテーマに、世界各地からエッセイを月1回お届けいたします。第7回は番外編として、フィンランドから。

フィンランドの“BabyKino”
森下詩子(Utako Morishita)

フィンランドの首都ヘルシンキには「ヘルシンキの子どもが、アートから“何か”を得られる場所」として作られたAnnantalo(アンナンタロ)という文化センターがあります。ヘルシンキの全ての学校と連携し、独自のアート教育プログラムやイベントが多数あるので、ヘルシンキの子どもなら学校の授業か家族に連れられて、必ず来たことがある身近な施設です。木造2階建ての建物の2階には広い廊下の両側に、音楽・美術・演劇・映画・ダンスなど様々なアート活動のためのスタジオやシアター、展示スペースなどがあり、1階には子どもと一緒にゆっくり食べられるカフェがあります。

そして、ここで0〜3歳児を対象にした映画鑑賞会“BabyKino”が定期的に行われていると聞き、早速見学に行ってきました。大きなスクリーンとその前に敷き詰められた大きなクッション、その周りをお父さん・お母さんが座る椅子が取り囲んでいます。クッションの上で友達や兄弟と大はしゃぎする子もいれば、じっと座って見ている子、お父さん・お母さんと一緒に寝ころんで見ている子など、20人程度の子どもたちが、入れ替わり立ち替わりやってきます。お母さんたちが声を掛け合う姿がよく見られ、ちょっとした社交場のよう。リピーターが多い気がします。お父さんが1人で子どもを連れてくるのが多いのも、育休取得が当たり前な北欧ならではかもしれません。上映後、運営スタッフのエンミ・フフトニエミさんに話を聞きました。

「BabyKinoは数年前に、子どもたちに質の高いアニメを見せること、子どもたちが映画館でもっと長い映画を観られるように少しずつ慣れさせることを目的に、ヘルシンキ市文化オフィスの支援によってスタートしました。10週連続のイベントで、春と秋の年2回実施しています。無料のサービスとして好評で、大人同伴のもと毎週40〜80人程が参加しています。上映する映画は、毎週下記の10個のテーマに基づいて5〜10分くらいの短編アニメーション(全てフィンランド語吹替、字幕なし)を20本選び、1回約2時間のプログラムです。映画を選ぶ時に、子どもを過小評価せず、人として大事なことを子どもに分かりやすく教えることを心がけています。」

<テーマ>
①友情
②創造性・アート・音楽
③都市・機械
④動物
⑤自然・季節
⑥愛・病気・思いやり
⑦冒険・旅
⑧賢さ・忍耐・勇気・チームワーク
⑨遊び・ゲーム・レクリエーション・仕事
⑩家事・食ベ物

「更にこのテーマは、アンナンタロのワークショップや市立図書館の児童文学、国立アテニウム美術館の絵画など、他のアート活動とも連携しています。質の高い映画を小さい頃から見せることが、その後の子どもの成長にどのような影響があるのか、統計的な成果はまだ出ていません。しかし、良い映画が持っている魔法は素晴らしい経験となり、子どもたちはそれを忘れることはありません。映画は重要なアートの一つであり、それを楽しむことは早いほど良いはずです。」
映画の力を信じるBabyKinoの試みは大変興味深く、その姿勢に共感します。

フィンランドの子どもの映画体験の次の段階として、映画を教材にした学校での授業があります。そのための教材を先生に提供しているNPO・koulukino(コウルキノ)に関しては、kinologueのサイト(http://kinologue.jimdo.com/) にて、今後紹介していきます。フィンランドは文化に対する国や市の支援が手厚く、こういったサービスを無料で受けることができ、また事業として持続可能な素晴らしい環境が整っています。それを羨みつつも、日本は日本らしく、映画と子どもたちを結びつけていく“楽しい”場を提供していければと思います。

森下詩子(Utako Morishita)
神奈川県藤沢市出身。映画配給・宣伝などの仕事を経て、映画とダイアローグのワークショップ“kinologue(キノローグ)”を主宰。現在、第2の故郷となりつつあるフィンランドを中心にした北部ヨーロッパに、学び・デザイン修行の旅に出ています。
kinologue http://kinologue.jimdo.com/
http://www.facebook.com/kinologue

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