ストックホルム 朝の9時に劇場は子どもたちでいっぱい

「こどもと映画」をテーマに、世界各地からのエッセイを月1回お届けいたします。第2回の担当はストックホルムの映画館プログラマー、マシアス・ホルツ。

朝の9時に劇場は子どもたちでいっぱい
マシアス・ホルツ (Mathias Holtz)

僕のお気に入りの映画の多くは、子供時代から10代前半に見た作品です。そうした映画には個人的な思い入れがあって、心を深く動かされ、人生について何かを学んだりしました。まるで映画はよき友のようでした。だから今の10代の観客を映画館、いや映画そのものに振り向かせるのが、ここまで難しいのはなぜなんだろうと思ってしまうのです。

若者は、愚かで、無知で、怠け者? 映画館のスクリーンで映画を観ることは今や若い人にとって魅力がない?そんなばかな・・・でもなぜ?
アート映画館の番組編成を仕事にする自分の役割を振り返ってみました。若い人を引き付けるために、何をしているか? あまりたくさんはないと気づきました。若い人にとって、頭を使わないステレオタイプのシネコンか、小難しそうで、ちょっと敬遠したいようなアート映画館の2つしか選択肢がありません。彼らがインターネットを選ぶのもうなずけます。

でもこの事実はちょっと気になります。放ってはおけない!
先日、ストックホルムの街を出て、僕が番組編成を担当している郊外の映画館を訪ねました。着いたのは朝の9時半。12歳から16歳の子供達で劇場はいっぱい。

そして突然、経済学者ジョン・A. クウェルチの本のタイトルを思い出しました。”All business is local”。全国規模のビジネスこそ、ローカルでの活動が重要なのです。

この子たちが映画館に来たのは、映画の良し悪しとは関係なくて、映画館と学校、地方自治体が協力した結果なのです。普段自分では見ないような映画に招かれ、見たものについて考える機会を与えられたのです。それで結果は? そう、朝の9時に劇場は満席。楽しい学校の1日!(ちなみに彼らが観たのは、「だれもがクジラを愛してる。」)


「だれもがクジラを愛してる。」
7月14日(土)TOHOシネマズ シャンテ他順次公開
(C)2012 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

老いも若きも「招かれた」と感じることが大切なのです。これこそが、映画館、芸術やエンタテインメントを提供する場所に必要なこと。観客を招き、歓迎し、提供するものを一緒に共有できること。

帰りの道すがら、同じことは家でもできるはずだと気づきました。帰宅して本棚にあるDVDを取り出して、2歳半になる息子フランスに話かけます。「フランス、いいもの見せてあげる。これがトトロだよ。僕の親友。トトロに会ってみるかい?」

マシアス・ホルツ (Mathias Holtz)
スウェーデンのアート系映画の配給会社で働いた後、folkets hus och parker(「人々のための家と公園」)の番組編成を担当。同社は900の会員を有する公益法人で、222の映画館、劇場、遊園地、コミュニティセンターなどが含まれる。

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