
『シチリアを征服したクマ王国の物語』 © 2019 PRIMA LINEA PRODUCTIONS – PATHE FILMS – FRANCE 3 CINEMA – INDIGO FILM
久々のパパ・ママジャーナリストに選んで頂く「今年の1本!」。2022年のベスト1には外国映画・日本映画どんな作品が選ばれたでしょうか?!
どれも素晴らしい作品なので、ぜひご覧になってみてください。
伊藤さとりさん(映画パーソナリティ)
外国映画『シチリアを征服したクマ王国の物語』
2022年公開された親子で観たい作品の中で、邦画も洋画もアニメは特出すべき作品が多かった。中でも外国映画『シチリアを征服したクマ王国の物語』は、クマの視点から権力を持った時の人間の愚かな行動を描き、どんな人も正義の為に立ち上がる中で、周囲をよく見て仲間との友好を築くことの大切さをメッセージ性に優れていた。さらにアート的な作風でアニメーションの特性を活かしたコミカルな七変化も子どもの感性を伸ばす効果があり、マンガ慣れした子ども達にイラストの無限性を伝える力があるように思えた。
日本映画 『さかなのこ』
邦画では親子で実写映画を見るきっかけを与えた作品として『さかなのこ』は素晴らしい結果を生んだ。子ども達に人気の「さかなクン」の自伝的原作を沖田修一監督が童心に返ったような演出で、可愛さと笑いを交えながらのん 演じるミー坊が母や友の力により困難を乗り越えていく物語は、子育て世代には大きな原動力に。「好きを探求すること」が未来へ繋がり、人を外見だけで判断しないことで友情が生まれ、愛されることで才能を見出してもらえるという「人と人との繋がり」を描いていた。なにより子ども達が目を輝かせて笑いながら映画体験を楽しんでいた作品だった。
森直人さん
外国映画 『カモン カモン』
米国の人気スタジオ「A24」が贈るマイク・ミルズ監督の『カモン カモン』は、9歳の甥っ子と過ごすことになったジャーナリストの疑似親子的な関係を描く珠玉のヒューマンドラマです。主演は名優ホアキン・フェニックス。突然の子育てに悪戦苦闘しながらLAやNYなど各地を回る叔父と甥っ子の姿は、まるで「父と息子」の練習のよう。大人だって、自分も未熟な人間だと認めることで、個人と個人の対等な関係になる。不器用なふたりのコミュニケーション・レッスンとでも呼べる本作は、マルク・ミルズ監督自身の子育て体験をベースに生まれました。“C’MON C’MON”というタイトルは、「先へ先へ」(未来)と「こっちにおいで」(融和)というふたつの意味を含みます。モノクロームの映像も素敵。
日本映画 『マイスモールランド』
これが本格的なデビュー作となる新鋭・川和田恵真監督の『マイスモールランド』は、埼玉県川口市で暮らす在日クルド人の家族を描く物語です。受験を控えた高校生でもある一家の長女サーリャ(嵐莉菜)と、アルバイト先で出会った東京の高校に通う聡太(奥平大兼)の交流を中心に、日本映画としてはまだ希少な「移民」という主題がリアルに掘り下げられていきます。サーリャには、英国と日本のミックスルーツを持つ川和田監督自身が体験した葛藤や自意識も反映されているとのこと。爽やかな青春映画でもある本作は、第72回ベルリン国際映画祭のジェネレーション部門に出品され、「アムネスティ国際映画賞」スペシャルメンションを授与されました。
宇野維正さん
外国映画 『アダム&アダム』
『ストレンジャー・シングス』に『フリーガイ』と、テレビシリーズでも映画でもヒットを飛ばし続けているショーン・レヴィ。『ナイト ミュージアム』シリーズもそうだが、レヴィの作品の特徴は突飛な発想力と、その発想をラストシーンまで説得力を持ってしっかり語りきることができるストーリーテリングの巧みさ。2050年から2022年へと時間を超えて逃走してきた中年の戦闘機パイロットが、いじめられっ子だった12歳の自分と遭遇し、一緒にタイムトラベルの発明者である父親がまだ生きていた過去へと向かう『アダム&アダム』の展開は、まさに超豪華な実写版「ドラえもん」といった趣。一昔前だったらSFエンターテインメント大作として世界中の映画館を賑わせていたに違いない作品が、Netflix映画として配信公開されて、家族で気軽に見られる時代。2022年のアダムとほぼ同年齢の息子は大興奮してました。特に息子がいるお父さんは是非ご一緒に!
日本映画 『線は、僕を描く』
「将来何になりたい?」と訊かれて即答できる子供は今どれだけいるのだろう? 日本の国力がこれだけ衰退し、世界情勢もこれだけ不安定になってくると、そこで何かをバシッと答えることがますます難しくなってきている。『線は、僕を描く』は、将来の夢も展望もなく無為な日々を過ごしていた一人の大学生が、水墨画と出会って自己再生していく物語。水墨画というアートフォーム本来の持つダイナミズムを鮮烈にとらえた劇中の描写も見事だが(本作をきっかけに水墨画に興味が湧く人は多いはず)、重要なのは水墨画そのものではない。タイトルが「僕は、線を描く」ではなく「線は、僕を描く」であるように、打ち込める対象はなんでもいいし、その道のプロで食っていくことだけが目的じゃない。何か打ち込める対象(=「線」)が見つかれば、それが自ずと「僕」を描いてくれるのだということが、きっと子供たちも直感的に伝わるのではないだろうか。
東紗友美さん(映画ソムリエ)
外国映画 『ミニオンズ フィーバー』
やっぱりアツかったのは『ミニオンズ フィーバー』!
勧善懲悪のストーリーは子供とみるのにやっぱり安心感がありますし、ミニオンのわちゃわちゃ感は大人にとっても癒し効果抜群ですよね。今回はミニオンたちの頑張る様子も盛りだくさん!健気さマシマシ、かわいさアップデート。頼れるミニオンの姿まで拝めます。
でもミニオンって可愛さを愛でるだけのキャラではありません。しゃべる言語は不明だけど人種や言葉や国を越えていく、彼らのユーモアや仕草や無邪気さに、言語を越えたコミュニケーションのヒントが溢れているところも実は見どころだと思うんですよね。 最強のボスである怪盗グルーが子供のころのエピソードを掘り下げて、グルーの誕生秘話にも迫れるストーリーは、展開があっという間でみるタイプのジェットコースターの体感でした。”助け合いの精神”にも触れられるメッセージに感動するはず!
日本映画 『ゴーストブック おばけずかん』
子供の頃のひと夏の大冒険。ちょっぴりノスタルジックな夏の思い出は一生モノの宝物になりますよね。『STAND BY ME ドラえもん』シリーズなどの山崎貴が監督や脚本などを手掛け、童話シリーズ「おばけずかん」を実写化。タイトル通りおばけは出てきますが怖いおばけではなくユニークなおばけなので、お子さんも安心して見れると思います。
山崎監督といえばVFX技術の映像表現ですがこれでもか!と何度見ても異なる発見ができそうな細部までこだわった、ため息モノの美しい映像は大人も子供も冒険の彼方へ誘います。登場するキャラクターたちも個性豊かで、きっと誰かに感情移入できるはず。500人以上オーディションをして決定した子供たちの中には演技初挑戦の子がいたり、そんなお話もしてあげることで”こどもの活躍”に触れられて、お子さんにとっても良い刺激になると思いますよ。