カンボジアの子どもたちに夢を届ける映画配達人

(2014年3月リエンポン村小学校・撮影:五百蔵直樹)

黒澤明監督は「映画は世界に開かれた窓」という言葉を残していますが、「映画を知らない子ども達がいるならば、そこに窓をつくりにいこう!」と、2012年に始まったのが、ワールド・シアター・プロジェクトの活動です。彼らは、「生まれ育った環境に関係なく子ども達が人生を切り拓ける世界をつくる」という理念のもとカンボジアの子ども達に、映画を届けています。紆余曲折、様々な困難を乗り越えて、映画と夢の配達人となったワールド・シアター・プロジェクトの代表理事・教来石小織(きょうらいせき・さおり)さんにお話しを聞きました。

なぜ映画を届けるの?

「なぜ、映画なの?途上国には映画より先に届けるものがあるんじゃないの?」と、多くの人に言われたと、教来石さんは話します。「確かに映画は、食糧やワクチンのように、生きる上で絶対に必要なものではありません。でも私にとって映画は、子どもの頃から生きていくための“夢”を与えてくれる素敵なものでした。途上国の子どもたちにも、そんな夢が必要ではないでしょうか。」

「映画という夢」を贈る側になりたいと、日本大学芸術学部に進学した教来石さんは、3年生の時にある出会いを果たします。「途上国の村にホームステイして、ドキュメンタリーを撮っていたときのことでした。仲良くなった村の子どもたちに、『将来の夢はなに?』と聞いてみたんです。答えられない子や、先生と答える子ばかりだったんです。電気のない村に、テレビも映画館もありません。だから将来の夢を聞かれても、身近な大人の姿しか思い浮かばない。知らない夢は、思い描くことができないんです。」もしもこの村に映画館があったら、子どもたちはどんな夢を描くのだろう・・・教来石さんの小さな夢の始まりでした。

左が教来石小織さん

しかし帰国後、日々の生活に追われ、夢のことは頭の片隅に追いやられてしまいます。10年が過ぎたころ、離婚、癌の疑いと、生きる希望を失いかけていた時、ふと10年前の夢を思い出します。「仲間の後押しもあり、気がついたらカンボジア行きのチケットを買っていました」。
いろんな人の助けを借りてカンボジアで即席の映画館をつくります。しかし、子どもたちは受け入れてくれるでしょうか?
そんな心配をよそに、子どもたちは、タヌキのお母さんの行動に、お腹を抱えて笑ったり、お母さんと少年が別れるシーンでは、ボロボロと涙をこぼしたり、生き生きと映画を楽しんでくれました。最後に大きな拍手が起こりました。「その時、私はこの活動を一生続けようと決意しました。」と教来石さんは話します。「初めてだったんです。私の人生で、こんなにもたくさんの人たちに喜んでもらえたのは。誰かに何かをしたくてカンボジアに行ったのに、逆に幸せや生きる希望をもらったのは、私の方でした。」

45000人のカンボジアの子どもたちに映画を!

カンボジアは1970年代半ば、内戦によって数百万人が虐殺され、映画文化も一度消えてしまいます。その当時のことは、「キリング・フィールド」、「消えた絵 クメール・ルージュの真実」、「シアター・プノンペン」といった映画に描かれています。
現在のカンボジアの人口は1500万人。そのうち未来を担う子どもたちは600万人と言われています。ワールド・シアター・プロジェクトの日本での仲間20人だけでは、各地を回ることができません。そこで彼らは、現地で映画を届けてくれる映画配達人を増やしたいと、トゥクトゥク・タクシーの運転手さんの協力を取り付けます。現在では週に1,2回のペースで上映を行っているそうです。

トゥクトゥクの運転手さんたちと子どもたち

ワールド・シアター・プロジェクトは、2017年11月末までで、45,745人の子どもたちに映画を届けました。数も大事ですが、もっと大切なのは、たった一人でも映画を見てくれた子どもに、将来の夢の選択肢が広がることではないでしょうか。教来石さんが、こんなエピソードを話してくれました。「大人たちが、タイに出稼ぎに行く村で暮らしている少女ピーちゃんは、将来の夢は先生になることだと最初話していました。でも映画を観たあと、こんなことを言ったんです。『夢が変わりました。私は、映画監督になりたいです』と」。これこそが、彼らの活動の原動力。教来石さんは、カンボジア以外の地域にもこの活動を広げていきたいと話しています。

監督になりたいと夢を教えてくれたスレイピンチャンと

※ワールドシアタープロジェクトでは、資金集めのためのイベントや上映会も国内で数多く実施しています。また、団体のマスコットキャラクター、映画の妖精フィルとムーのグッズを販売し、利益をすべて活動に充てているとのこと。詳細は公式HPをご覧ください。
ワールド・シアター・プロジェクトHP

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