こども映画図書館「ベイマックス」

「ベイマックス」
矢本理子(Rico Yamoto)

前作「アナと雪の女王」で姉妹愛を描き、世界中を魅了したウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオが、この冬、兄弟愛をテーマとした最新作「ベイマックス」を完成させました。ディズニー初のマーベル・コミックの映画化で、舞台はサンフランソウキョウという科学技術が発達した架空の未来都市、そして主人公の名はヒロ・ハマダです。もうこの情報だけで、この作品に興味をかきたてられませんか?

14歳の少年ヒロは、兄タダシと叔母キャスとの3人暮らし。天才的な頭脳を持つヒロですが、夜な夜な、自作ロボットの戦闘力を試すために闇の競技場へ通う日々を送っていました。そんな弟を心配するタダシは、ある日、サンフランソウキョウ工科大学へヒロを連れ出します。タダシの研究室の仲間たちは変わり者ばかりですが、自らを科学オタクと称し、斬新な発明品を生みだそうと奮闘する姿は、楽しそうです。著名な科学者キャラハン教授と会い、ヒロは自分も大学の研究発表会にチャレンジすることにしました。数カ月の悪戦苦闘の末、マイクロボットという画期的な発明品を生みだしたヒロは、大学への入学が許可されます。しかしその喜びも束の間、その夜、大学で謎の爆発事故が起こり、最愛の兄タダシとキャラハン教授が命を落としてしまうのです・・・。すっかりやる気を失ったヒロ。しかしある日、彼の声に反応して、風船のようにふくらんだ、真っ白い人型ロボットが起動します。それは生前のタダシが発明した、傷ついた人の心と体を守るケア・ロボット、ベイマックスでした。

現代の私たちにとって、ロボットはすっかりお馴染みの存在ですが、そもそもこのロボットという言葉が歴史上いつ登場したか、ご存じでしょうか? 旧チェコスロヴァキアの国民的な作家カレル・チャペックが1920年に発表した『ロッサム万能ロボット会社』という戯曲が、そのはじまりと言われています。この小説におけるロボットは、人間の代わりに労働を行う人造人間のことですが、実はロボットとは、チェコ語で強制労働を意味するrobotaという言葉をもとにして生みだされた造語なのです。また、アメリカの生化学者でありSF作家としても活躍したアイザック・アシモフが1950年に発表した『われはロボット』という小説も重要です。この小説で提唱された“ロボット三原則”がそれ以後のSF小説や漫画や映画、さらには実際のロボット工学にまで、多大なる影響を与えました。“ロボット三原則”についてもっと知りたい方は、『われはロボット』をぜひ読んでみてください。

日本におけるロボットは、手塚治虫が1952年から「少年」(光文社)で連載を開始した漫画『鉄腕アトム』が出発点となりました。1963年からテレビ放映されたアニメーション版「鉄腕アトム」が日本中で親しまれ、アトムが日本における人型ロボットの象徴となったことは言うまでもありません。それから60年あまり。日本は今やロボット工学の最先端を担う国となりました。産業用ロボットや家庭用ロボットなどは既に実現化されており、現在はソフトバンク社のPepperのような、感情認識ロボットが開発される時代となりました。ベイマックスのように、人の心身状態を感知し、最適な対処を行うことがプログラミングされているケア・ロボットも、そう遠くない未来に実現化されるかもしれません。

さて、本作「ベイマックス」の面白さは、ディズニー映画らしからぬ戦闘ヒーローたちの活躍と、ロボットでありながらも人間のように優しいベイマックスの組み合わせにあります。実際、復讐心に燃えて冷静な判断がつかなくなっていたヒロに、あることを思い出させて、その暴走を止めたのはベイマックスでした。また、映画の舞台である和洋折衷都市サンフランソウキョウの景観も魅力的ですし、映画の随所で日本のポップカルチャーの影響を感じ取ることができます。もともと原作の「ビッグ・ヒーロー・シックス(BIG HERO 6)」の登場人物たちは、みな日本人でした。ディズニーはこの漫画のプロットを元に、アメリカ文化と日本文化を見事に融合させて、全く新しいヒーロー物語を作り上げたのです。子どもの頃から日本の漫画やアニメーションに慣れ親しんできたアメリカ人スタッフたちが、日本人スタッフたちの協力をえて生みだした、日本文化へのオマージュ作品でもある「ベイマックス」。この冬の話題作を、どうか見逃さないでください。

「ベイマックス」©2014 Disney. All Rights Reserved.

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