
大きな秘密を持った小さな子どもと母親の
「成長と自立」を描くファンタジー・アニメ
おおかみと人間、ふたつの血を引く「おおかみこども」と、その母の成長と自立を温かい目線で描くファンタジー・アニメーション。『時をかける少女』『サマーウォーズ』の細田守監督の第3作目にあたります。
大学生の花は「おおかみおとこ」と恋に落ち、ふたりの子どもを授かりますが、ある日おおかみおとこが亡くなってしまいます。悲しみをこらえ育児に奮闘する花。雪の日に生まれた女の子「雪」は好奇心旺盛でやんちゃざかり。雨の日に生まれた男の子「雨」は体も気も弱く泣いてばかり。幼さゆえ、本能のままにおおかみと人間の姿に変身してしまうふたりを都会で育てることに限界を感じた花は、山奥のオンボロ古民家に移り住むことにします。
「おおかみこども」であることは秘密にしつつも、豊かな自然と優しい周囲の人々に支えられ、のびのびと育つ雪と雨。しかし雪が小学校4年生になったある日、事件が起こり、親子3人はそれぞれ人生の選択を迫られることになります。
「どうしておおかみはいつも悪者なの?」と絵本を読んで涙する息子、雨に「みんなが嫌っても、おかあさんはおおかみが好きよ」と優しく答える花。その大きな愛、すべてをまるごと受け止める母親像が素敵です。花、雨、雪を筆頭に、人情味あふれる田舎の人々など魅力的なキャラクター、アニメーションだからこそできる13年という長いスパンのドラマに、自然に引きこまれてしまいます。
美しい自然描写、ダイナミックなシーンもあり、素直に娯楽映画として楽しめます。子育て、成長、自立など、親も子も問題に直面したときの心情が丁寧に描かれている点も好感が持て、誰もが自分の身近な感情に置きかえて観ることができるでしょう。(上原千都世)
公式HP
(C)2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会
日本語音声:あり
白黒/カラー:カラー
製作年:2012年
声の出演:宮崎あおい
:大沢たかお
製作国:日本
原題:
備考:

- 雨の夜泣きでアパートの住人から怒られるシーンは、人ごととは思えず涙……。つわり、出産、離乳食など子育てに苦労した方には「わかる!」シーンが満載です。みなさん、子育て中のお母さんには優しくしてくださいね(笑)。わんぱく娘の雪が突然「女の子」を意識し始めたり、弱虫だった雨がグッと大人びた「男子」に成長、その変化に「母」の花がとまどったり。「成長と自立」がセットの思春期の入り口、10歳前後の子どもを持つ母にはとてもリアルで胸に迫りました。