「本と旅する 本を旅する」

「本と旅する 本を旅する」
矢本理子(Rico Yamoto)

毎年10月27日から11月9日までの2週間が“読書週間”であることをご存知ですか? 1947年に「読書の力によって、平和な文化国家をつくろう」という目的で始まったこの読書推進運動は、全国に広がり、日本はいまや世界でも有数の読書国家となりました。今年の“読書週間”のテーマは<本と旅する 本を旅する>です。そこで今回は、映画化された、旅と冒険に関する本を3冊ご紹介します。


八十日間世界一周 ジュール・ヴェルヌ 角川書店

『80日間世界一周 スペシャル・エディション(2枚組)』DVD
3,129(税込) ワーナー・ホーム・ビデオ

先ずはフランス人作家ジュール・ヴェルヌの「八十日間世界一周」です。「地底旅行」や「海底二万里」といった“驚異の旅シリーズ”で知られるヴェルヌは、SF小説の父と呼ばれています。映画史上名高いジョルジュ・メリエス監督の『月世界旅行』も、実はヴェルヌが1870年に発表した「月世界へ行く」がモチーフとなっていました。

「八十日間世界一周」の主人公は、毎日規則正しい生活をおくるイギリス人紳士のフィリアス・フォッグ氏。ある日、彼は所属するクラブで2万ポンドの賭けをし、八十日間で世界を一周する旅に挑戦することになります。旅程表通りにいけば、楽々とロンドンへ帰国できるのですが、そうは問屋がおろしません。鉄道工事中で線路がなくなり汽車が停まってしまったり、殉死させられそうなインド人女性を助けたために船に乗り遅れたり、アメリカ人から決闘をふっかけられたり……。フォッグ氏は次々とトラブルに見舞われます。

1869年に開通したスエズ運河を通れば八十日で世界を一周できるという新聞記事を読んだことと、クック旅行社のチラシがきっかけとなって生みだされた「八十日間世界一周」は、アジア諸国を経由する船旅や、アメリカを横断する汽車旅に関する克明な旅行記であると同時に、手に汗にぎる冒険談でもあります。とりわけ、召使いパスパルトゥーの八面六臂の大活躍が愉快なのです。


はてしない物語 ミヒャエル・エンデ 岩波書店

【初回限定生産】ネバーエンディング・ストーリー エクステンデッド版
ブルーレイ(2枚組)4,980 円(税込)ワーナー・ホーム・ビデオ
The Neverending Story © 1984 Neue Constantin Film Productions GmbH. Package Design © 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. Distributed by Warner Home Video. All rights reserved.

次にご紹介するのは、ドイツの児童文学「はてしない物語」です。主人公のバスチアンは、ある日、いじめっ子から逃げて飛びこんだ本屋で、不思議な表紙の本を見つけます。さっそく学校の屋根裏の物置で本を読み始めるバスチアン。物語の舞台ファンタージエンでは、虚無が広がり住民が消えていく難問が生じつつありました……。困ったことに、この国の女王である幼ごころの君まで病にふせてしまいました。

この危機を救う人物として選ばれたのは、狩人の少年アトレーユでした。幼ごころの君のお印であるアウリンを授かったアトレーユは、幸いの竜フッフールと共にファンタージエン中を旅し、国を救う方法を探します。この物語の不思議なところは、現実世界で本を読んでいるはずのバスチアン自身が物語の中に入りこんでしまうことです。彼もまた登場人物の1人となって、冒険の旅に出るのです。いったいバスチアンはその後どうなってしまうのでしょうか? 続きが気になる方は是非、この本に挑戦してみて下さい。きっと幻想的なファンタージエンの世界に魅了されることでしょう。


魔女の宅急便 角野栄子 角川書店

最後は、元気な女の子が主人公の楽しい物語、角野栄子さんの「魔女の宅急便」を取りあげましょう。原作本は1985年に刊行されましたが、スタジオジブリが1989年に公開したアニメーションによって、この物語を知った方も大勢いることでしょう。

魔女のキキは古くからの掟にしたがい、13歳になった年の満月の夜、黒猫のジジと共に飛び立ちます。魔女はその歳になると、故郷をはなれて1人立ちしないといけないのです。海に近い大きな町コリコに辿りついたキキとジジは、ほうきを使って物を運ぶ“魔女の宅急便屋”を始めました。しかし、いきなり仕事が舞いこんでくる訳ではありません。下宿先のパン屋のおソノさんや、空に憧れる少年とんぼに助けてもらいながら、キキは少しずつ町の人々との交流を深めていきます。時には仕事で失敗もするけれど、キキはその度に新しいことを学んでいきます。その姿が清々しいのです。

アニメ版のコリコの町のモデルは、スウェーデンのストックホルムとバルト海のゴトランド島にあるウィスビーという町だそうです。私たちもほうきに乗って飛び回りたくなるような、素敵な港町ですよね。2014年の3月には、清水崇監督による実写版『魔女の宅急便』が公開されるそうです。本の世界の冒険旅行を楽しんだ後に、映像の世界で追体験ができるなんて、素晴らしいことだと思いませんか?

「魔女の宅急便」DVD (C)1989 角野栄子・二馬力・GN
発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
価格:DVD2枚組 4,935円(税込)

≫読書週間

矢本理子(Rico Yamoto)
東京うまれ、茨城県そだち。大学では社会学と歴史学を、大学院では西洋美術史を学ぶ。
1995年に岩波ホールへ入社。
現在は宣伝を担当。

【過去の記事】
≫「ヒューゴの不思議な発明」
≫「床下の小人たち」
≫「グスコーブドリの伝記」
≫「ピーター・パン」
≫「本へのとびら ― 岩波少年文庫を語る」
≫「白雪姫と鏡の女王」
≫「009 RE:CYBORG」
≫「シルク・ドゥ・ソレイユ」
≫「ホビット 思いがけない冒険」
≫「レ・ミゼラブル」
≫「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」
≫「オズ はじまりの戦い」
≫「舟を編む」
≫「パパの木」
≫「コン・ティキ」
≫「少年H」

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