「オズ はじまりの戦い」

「オズ はじまりの戦い」
矢本理子(Rico Yamoto)

私がまだ8才だった頃、『オズの魔法使い』の本が一番のお気に入りでした。新井苑子さんの挿絵が大好きで、将来は、新井さんが学んだ女子美術大学へいって、自分も油絵を学ぼうと思っていました。

ハヤカワ文庫 佐藤高子訳/新井苑子イラスト

ライマン・フランク・ボームが1900年に発表した『オズの魔法使い』は、アメリカの傑作ファンタジーです。主人公ドロシーはカンザスの草原地帯で、おじ夫婦と小さい犬トトと暮らしていました。ところがある日、ドロシーとトトは家ごと竜巻に巻きこまれ、魔法の国オズへ飛ばされてしまいます。ドロシーは故郷へ帰るために、偉大なる魔法使い“オズ”が住むエメラルドの都を目指します。そして道すがら、脳みそが欲しいかかしや、ハートが欲しいブリキの木こり、勇気が欲しい臆病なライオンと出会い、皆はそれぞれの願いを“オズ”に叶えてもらうために、冒険の旅に出かけるのです……。

『オズの魔法使い』の魅力とはなんでしょうか。おそらく、個性的なキャラクターと彼らの設定にあると思います。ドロシーや仲間たちは、どんな困難にあっても諦めず、互いに助け合い、問題を切りぬけていきます。この物語のメッセージは、そうした友情や助け合いの精神といった、アメリカの良心なのでしょう。でもボームの素晴らしさは、そうした普遍的なメッセージを、単なる教訓話ではなく、楽しいお話にまとめた点です。
『オズの魔法使い』は、これまでに何度も映画化されてきました。とりわけジュディ・ガーランドが主演した1939年のミュージカル映画は、<オーバー・ザ・レインボー>という名曲を生み出したことでも有名で、いまでも根強いファンがいます。

3月8日から、『オズの魔法使い』にまつわる楽しいディズニー映画、「オズ はじまりの戦い」が公開されています。この映画について知った時は、興奮しました。何故なら、これはあの偉大なる魔法使い“オズ”の誕生についてのお話だからです。実はあの魔法使いには、オズの国の人々には知らされていない、重大な秘密があるのです。
「オズ はじまりの戦い」の主人公オスカー・ディグズは、サーカス団のマジシャンでした。女たちをだますペテン師でもあったオスカーは、ある日怒ったレスラーに追い回され、やむなく気球に逃げこみます。しかし直後に竜巻に巻きこまれ、はるか上空へと運ばれてしまいます。恐ろしい空中飛行の末に彼が降りたったのは、極彩色の花が咲きみだれる不思議な土地でした。この国の人々は、空から突然現われたオスカーを、予言されていた魔法使い“オズ”として歓迎します。

© 2013 Disney Enterprises, Inc.
3D・2D同時公開中

当時のオズには、不穏な空気が漂っていました。各地を治める魔女たちの中に、オズ全土の支配をねらう悪い魔女がいたためです。勘違いで偉大な魔法使いにされてしまったオスカーは、事情がわからぬまま、魔女たちの争いに巻きこまれてしまいます。当初は財宝や地位に目がくらみ、魔法使いのふりをしていたオスカーでしたが、所詮はたんなるマジシャンです。彼の素性があらわになるにつれ、徐々に苦境にたたされていきます……。
しかし、彼に希望をいだく人々と接するうち、オスカーは“オズ”としての使命に目覚めます。そして、ある奇策を思いつくのです。このアイディアが素晴らしいのですが、実はオスカーは、映画史上で重要な役目を果たした、ある実在の人物から、そのヒントを得ています。いったい彼が何を思いついたのか。それは、映画を観てのお楽しみです。

竹書房 ライマン・フランク・ボーム[原作] ミッチェル・カプナー、デイヴィッド・リンゼイ・アベイア[脚色] エリザベス・ルドニック[編著]
入間 眞[編訳]文庫判 定価 680円(税込)

映画「オズ はじまりの戦い」は、ミッチェル・カプナーの脚本から生まれました。原作者ボームは、『オズの魔法使い』のあと、続編を13編書いていますが、魔法使い“オズ”の過去については、詳しく書き記していません。カプナーは、ボームが残した数々のオズ・シリーズの断片をもとにして、このオリジナルストーリーを編みだしたのです。この映画がきっかけとなって、ライマン・フランク・ボームの『オズの魔法使い』や、オズ・シリーズの楽しい世界に触れる読者が増えてくれることを、願っています。

矢本理子(Rico Yamoto)
東京うまれ、茨城県そだち。大学では社会学と歴史学を、大学院では西洋美術史を学ぶ。
1995年に岩波ホールへ入社。
現在は宣伝を担当。

【過去の記事】
≫「ヒューゴの不思議な発明」
≫「床下の小人たち」
≫「グスコーブドリの伝記」
≫「ピーター・パン」
≫「本へのとびら ― 岩波少年文庫を語る」
≫「白雪姫と鏡の女王」
≫「009 RE:CYBORG」
≫「シルク・ドゥ・ソレイユ」
≫「ホビット 思いがけない冒険」
≫「レ・ミゼラブル」
≫「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」

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